フランスの国歌 「ラ・マルセイエーズ」 - 東京オリンピックそしてパラリンピックの閉会式でのパリ大会のプレゼンテーションは、ラ・マルセイエーズから始まりました。名前の由来となった南フランスのマルセイユ周辺は、ロゼワインの一大産地です。

ラ・マルセイエーズPHOTO

『ラ・マルセイエーズ』と『飲兵衛のラ・マルセイエーズ』

「ラ・マルセイエーズ」が誕生したのは1792年です。1789年のパリでの民衆の武装蜂起から揺れるフランス。亡命貴族と周辺国からの干渉戦争の恐れが高まり、17924月、国王ルイ16世はオーストリアに宣戦布告をします。これを受けて、アルザスのストラスブール駐在のフランス人将校ルージェ・ド・リールが一晩で書き上げたのが、『ライン軍のための軍歌』です。

1792年、パリ民衆と連盟兵がテュイルリー宮を襲撃し国王を監禁する8月10日事件を前にして、地方から多くの連盟兵がパリに結集してきました。このとき、マルセイユから到着した連盟兵がこの『ライン軍のための軍歌』を歌っていたのです。これが契機となり、『ラ・マルセイエーズ』と呼ばれるようになり、1795714日に国家として制定されました。

民衆のエネルギーが高揚する革命の日々、お酒は手放すことのできないものであったのでしょう。17921125日付けの朝の新聞に、作者不詳の『飲兵衛のラ・マルセイエーズ』が掲載されました。この替え歌、こんな具合でした。

例えば、『ラ・マルセイエーズ』のサビの部分

Aux armes, citoyens,
Formez vos bataillons,
Marchons, marchons !
Qu’un sang impur
Abreuve nos sillons !

「武器を取れ、同志よ、
隊伍を組め、
進め、進め!
汚れた血で我らが畑を潤すのだ!」

結構、穏やかならぬ歌詞ですが、これが替え歌になると・・・

『飲兵衛のラ・マルセイエーズ』
「食卓につけ、同志らよ、
ワインを飲み尽くすのだ
飲め、飲め
清らかなワインで肺を潤すのだ。」

これぞ、まさに飲兵衛! という感じです。

マルセイユ、そして、プロヴァンス

マルセイユは、地中海に面したフランス最大にして最古の港町であり、プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏の首都。まさに、プロヴァンスの中心都市といえます。プロヴァンスというと、どのようなイメージをお持ちでしょうか? バカンス、真っ青な海、暖かい陽光、満開のラベンダーやヒマワリの畑、セザンヌやゴッホなどの画家。そして、アンジー&ブラピ、いやいや、ゴクミ&アレジだ、などセレブのイメージもあるかもしれません。

プロヴァンスで今回ご紹介したいのは、ロゼワインです。プロヴァンスのワイン生産量の91%はロゼで、まさにフランスのロゼワインの一大産地なのです。しかもプロヴァンスには、世界で唯一の「ロゼワイン研究センター」が1999年に設立され、ロゼワイン生産の技術向上に取り組んでいます。このような研究の支えもあり、プロヴァンスの現在のロゼワインがあるのです。

ロゼ? 「イメージわかない」という方も多いかもしれません。日本ではまだそれほど消費量は多くありませんが、フランスは世界最大のロゼワインの生産国であり、最大の消費国でもあります。

プロヴァンスのロゼワインはまず、美しい淡いピンク色がトレードマークです。これが、地中海の青さに映え、リゾート地で人気になったのです。「そんなこと言われても日本に地中海ないし・・、もう涼しいし・・・・」と、きわめて理論的な反論をされる皆様。ロゼワインは、バカンスや桜の花見の時期だけのものではありません。四季を通じで、ピンク色のいろいろな草花があるように、ロゼワインも一年を通して楽しめるものなのです。

「ロゼは甘口では?」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、プロヴァンスのロゼワインは辛口です。軽く冷やせば白のように、あまり冷やさなければ赤のように楽しめます。秋の味覚、サンマは、ロゼと相性抜群。秋鮭のあの淡いピンク色にも、プロヴァンスのロゼの色はぴったりです。冬の定番、お鍋。いろいろな食材を使い、味も様々ですが、だからこそ、幅広い味わいに適応できるロゼが合うのです。和洋中アジアンと、多国籍な料理が並ぶ日本の食卓で、オールマイティに楽しんでいただけるのが、プロヴァンスのロゼなのです。

赤ワインを飲むとお歯黒のように、歯が黒ずんでいた、という経験をされている方も多いのではないでしょうか? プロヴァンスのロゼであれば、色も淡く、タンニンも多くないので、お歯黒となることはありません。そしてあの淡いピンク色は、秋晴れの青空のもとでも、おうちの中でも、エレガントな輝きを見せてくれます。いつでもどこでも、美しくワインを飲みたいと願う皆様には、プロヴァンスのロゼは最適といえます。

「ワインを飲み尽くすのだ、飲め、飲め」・・・を心に秘めながら、ぜひプロヴァンスのロゼをお試しください。

*歌詞の日本語訳はいずれも、ジルベール・ガリエ著、八木尚子訳(2004)『ワインの文化史』筑摩書房

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