私はフランスで3人の子どもを育て、10年以上にわたって保育園(クレッシュ)や幼稚園、小学校の給食を間近で見てきました。そこで子どもたちに出されていたのは、世界中の関心を集めるのも納得の献立でした。ビーツのサラダやレンズ豆、ムール貝、さまざまな魚、旬の果物や野菜、多彩なチーズ(かなりクセのあるものも含む)が並びます。
私はフランス各地の学校で、子どもたちが食べる様子を見たり、配膳を手伝ったり、生徒や給食スタッフに話を聞いたりしてきました。フランスの子どもたちも出されたものを何でも喜んで食べるわけではありませんし、好き嫌いだってあります。それでも、幼い頃から多種多様な食べ物や味に触れられる環境が整っているのです。
© Rebeca Plantier / Lessons From France
食との出会いは、赤ちゃんの頃から
さまざまな食べ物との出会いは、離乳食から始まります。フランスの一般的なスーパーマーケットでベビーフード売り場を覗いてみると、その豊富さがよく分かります。アスパラガスやアーティチョーク、リーキ(ポロネギ)やフェンネルが使われていることも珍しくありません。少し大きくなった赤ちゃん向けには、ラタトゥイユや魚を使った離乳食まで並んでいます。
家庭でも、多くの親が最初からさまざまな果物や野菜を取り入れています。いわゆる「子ども向けの食べ物」だけに頼らず、成長して家族の食卓や保育園で食べることになる食材の多くに、赤ちゃんの頃から親しんでいくのです。
保育園
生後数か月で保育園に通い始める子もいれば、もう少し大きくなってからの子もいます。私が訪れた多くの公立保育園の給食は、小学校の給食室や自治体の給食センター(保育園から幼稚園、小学校までの給食をまとめて調理する施設)で用意されていました。
厨房のスタッフは、小さな子どもでも食べやすいように調理法を工夫します。離乳食では野菜を細かくすりつぶしたり、ピューレ状にしたり。幼児用の食事では肉や魚を小さく切りますが、使う食材はほぼ同じです。
まだ小さな子どもたちもみんなでテーブルを囲み、本物の皿やカトラリー、コップを使います。こうした食事のスタイルは、幼稚園、小学校へと進んでも変わりません。
小学校に上がる頃には、大人と同じような献立になります。 教師や警察官などの公務員が、同じ調理場で作られた食事を食べることもあります。つまりフランスでは、幼い頃から大人と同じような食材を取り入れ、年齢に合わせた形で少しずつ食べさせていくのです。
© Rebeca Plantier / Lessons From France
幼稚園から小学校へ
3歳前後で幼稚園(エコール・マテルネル)に入っても、給食の内容が大きく変わるわけではありません。保育園から幼稚園、そして小学校まで食事のスタイルは一貫しており、成長するにつれて、食材を細かくしたりやわらかくしたりすることが少なくなるだけです。
小学生になると、給食は前菜、メインディッシュ、チーズや乳製品、デザートの4品構成になります。
食材の品質と調達
この10年ほどで、フランスの公立学校の給食に使用される食材の品質や調達に関する規定が整備されてきました。現在、集団給食用に購入する食材の50%以上は所定の品質または持続可能性の基準を満たす必要があり、20%以上はオーガニック食品でなければなりません。
給食の調理場所は自治体によって異なります。校内の給食室で一から調理するところもあれば、自治体の給食センターや外部の給食業者を利用するところもあります。私は朝の6~7時頃に、学校の給食室に食材が届く様子を見たことがあります。その日の調理が始まる前に、新鮮な果物や野菜が入った箱が次々と運び込まれていました。旬を大切にしていることが、献立だけでなく、調理場へ届く食材からも見て取れます。
献立には品質ラベルが記載され、食材がどのように調達されているかも分かるようになっています。オーガニック食品には緑の葉をかたどったEUの有機認証マーク(またはABロゴ)、より高い品質基準を満たす食品にはラベル・ルージュ、そしてAOP(原産地呼称保護)やIGP(地理的表示保護)の認証を受けた産地名が表示されています。
© Rebeca Plantier / Lessons From France
フランスの学校給食、実際の献立は?
パリ15区のある小学校は、こんな献立でした。
前菜:オーガニック ニンジンのキャロットラペ
メインディッシュ:フランス産牛肉を使ったスパゲッティ・ボロネーゼ チーズ:オーガニックの コンテ(AOP)
デザート:ミルクチョコレートムース
パン:ラベル・ルージュ認証のパン
同じ週の別日の献立:
前菜:メロン
メインディッシュ: フランス産仔牛肉のタジン風ソテー、オーガニックセモリナのクスクス添え
チーズ:ゴートチーズ
デザート:リンゴとイチゴのコンポート
パン:ラベル・ルージュ認証のパン
野菜は調理法を変えながら、毎日の献立に登場します。例えばズッキーニなら、ある週はスープ、別の週はグラタンやラタトゥイユに使われます。同じ食材を繰り返し使うことで親しみを持ってもらい、調理法を変えることで野菜の美味しさに気付いてもらう機会も増やしているのです。すべての子どもにすべての野菜を好きになってもらおうというわけではありません。大切なのは、野菜をはじめとする多彩な食材を味わう習慣をつけてもらうことです。
© Rebeca Plantier / Lessons From France
家庭にも息づくフランスの食文化
子どもたちが食を学ぶ場は、学校だけではありません。給食はフランスの幅広い食文化の一部分を占めています。子どもたちは家庭でも、野菜や旬の食材、チーズ、魚などを味わい、家族と一緒に食卓を囲みます。
もちろん、フランスの子どもたちが理想的な食生活だけを送っているわけではありません。市販のクッキーやお菓子、ファストフードを食べたり、炭酸飲料を飲んだりすることもあります。私の子どもたちもそうでした。しかし、こうした食べ物が子どもたちの食習慣を左右することはありませんでした。家庭でも学校でも、決まった時間に食事を取り、さまざまなものを食べ、みんなで食卓を囲む。それが毎日の基本でした。
フランスの子どもたちの食事を長年見てきた私が特に興味深いと感じるのは、学校と家庭という2つの環境が互いを補い合っていることです。レンズ豆やビーツのサラダは、学校でも家庭でも出てきます。席について食事をするという習慣は家庭だけでなく給食でも身につき、学校では自宅の食卓にのぼらない食べ物に出会えます。
こうして育まれるのが、みんなで共有する食文化なのだと思います。もちろん、フランスのどの家庭も同じ食生活をしているわけではなく、すべての子どもが同じものを好きなわけでもありません。ただ、何百万人もの子どもたちが、学校と家庭で似たような献立や食材、食習慣に繰り返し触れることで、食に対する共通の感覚が育まれていくのです。
フランスの子どもたちも、生まれたときからムール貝やビーツのサラダ、ズッキーニのスープを食べているわけではありません。好き嫌いだってあります。それでも、離乳食から保育園や学校の給食、そして家庭の食卓まで、こうした食べ物が繰り返し並ぶ環境で育ちます。すべてを好きになる必要はありませんが、さまざまなものを食べる機会が十分に与えられているのです。
Contributor
Writer & researcher