プロのシェフから料理愛好家まで、さまざまな人々が「世界一大きなケーキ」や「世界最長のバゲット」、「最長の伸びるチーズ」を目指して競い合ってきました。今回は、フランスが誇る、最高にクレイジーな食の世界記録をご紹介します。
バゲット
意外なことに、バゲットの世界最長記録は長年にわたってイタリアのパン職人チームが保持していました。しかし2024年、フランスのシュレンヌに12人のパン職人が集結し、全長140メートルの巨大なバゲットで記録を塗り替えました。140メートルを均一に、折れないように焼き上げるには、特注のコンベア式オーブンが必要でした。
完成した世界最長バゲットの一部は地元のフードバンクに寄付されました。残りはカットしてヘーゼルナッツスプレッドをたっぷり塗り、参加者の皆さんに焼きたてを振る舞いました。
ファー・ブルトン
食の世界記録は、プロだけのものではありません。地元で愛される郷土菓子も登録されています。その一例が、ブルターニュ地方で人気のあるカスタード生地の焼き菓子、ファー・ブルトンの世界最大記録。パティシエとボランティアのチームが、小さなベッドルームほどもある19平方メートルの世界最大のファー・ブルトンを作り上げました。
材料には、小麦粉225キロとブルターニュ名産の有塩バター60キロを使用しました。フランスで開催されるさまざまな料理コンテストや記録挑戦イベントと同じように、この巨大ファー・ブルトンも人々のお腹を満たし、地域コミュニティにも貢献しました。完成したファー・ブルトンはカットして販売され、その収益が地元の高齢者施設へ寄付されたのです。
ピサラディエール
ピサラディエールは、オリーブ、飴色になるまで炒めた玉ねぎ、アンチョビをたっぷりのせた南仏のフラットブレッド。南仏全域で親しまれていますが、発祥の地であるニースでは特に人気があります。そんなニースで2026年2月に、地元の料理カンファレンスに集まったプロのチームによってピサラディエールの世界最大記録が樹立されました。
この挑戦には、約27キロの玉ねぎと4キロのアンチョビペースト、さらにトッピング用として大量のアンチョビフィレが必要でした。直径2メートルの巨大なピサラディエールを建物に運び込むために、ドアを蝶番から外さなければなりませんでした。
フォンデュ
ジュラ山脈をはさんで向かい合うフランス人とスイス人は、双方が愛するフォンデュについて議論するのが大好きです。最高のフォンデュに使うのはフランス産のコンテチーズか、それともスイス産グリュイエールか。白ワインの割合はどのくらいが最適か。フォンデュ鍋にパンを落としてしまった人への罰ゲームをどうするかといったテーマは意見の分かれるところです。
ただし、「世界最大のフォンデュ鍋」の記録がフランス人の手にあるという点では、議論の余地がありません。この記録を達成したのは、チーズを製造・販売するJuraflore社。主催者の一人であるフランク・アルノー氏は地元メディアに「スイスに勝たなければいけません」と語りました。
この挑戦には、驚くほど大量の材料が必要でした。使用されたコンテチーズは、丸ごと40個で総重量は約1,600キロ。そして、数百リットルの地元産白ワイン。巨大な銅鍋で調理された世界最大量のフォンデュは、長テーブルを埋めつくす地元の空腹な人々に振る舞われ、2.1776キロもの熱々フォンデュはあっという間になくなりました。
最長の伸びるチーズ
カーンでは、伸びるアリゴチーズの世界最長記録に挑戦するという夢を3兄弟が追いかけていました。
アリゴは、フランス南西部で生まれたフォンデュの親戚のような料理。主な材料はトムチーズ、ニンニク、ジャガイモです。ジャガイモのでんぷんによって驚くほど伸びる独特の食感が特徴で、木のスプーンで持ち上げたときに「どれだけ長く伸びるか」が、美味しいアリゴの目安と言われています。
シプリアン、ヴィクトル、ヴァンドリーユのゴッセ3兄弟は、その限界に挑戦しました。巨大な鍋でジャガイモを65キロ、トムチーズを22キロも使ったアリゴを用意。天井が高く、フォークリフトを備えた地元のクライミングジムで挑戦に臨みました。結果はなんと6.3メートル。2階建ての建物を超える高さまで伸びたアリゴは、2024年にギネス世界記録として正式に認定されました。
食の世界記録への挑戦は単なる自慢の種ではありません。こうしたイベントは、食べるためだけでなく、フランスの有名な食文化を支える優れた職人技や各地域の伝統を讃えるために人が集まるという長い伝統に根差しています。
Contributor
Cook & writer