夜が明け、エグ=モルト[HK1] の塩田に朝日が差し始める頃、アラン・ベルテロはすでに仕事に勤しんでいます。彼は35年前から塩職人として、海水をカマルグの塩田に引き込み、塩ができるまで見守ってきました。塩職人の仕事は目立たないものの、責任が重く、何世紀も前から受け継がれてきた技の賜物です。

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カマルグがヨーロッパ有数の塩の産地となったのは、まれに見る地理的要因が重なったからです。エグ=モルトには、広大な土地、豊かな日差し、強い風、少ない雨という理想的な条件が揃っています。「太陽が水を蒸発させ、風がそれを早め、海が原料をもたらしてくれます。この自然の条件が揃わず、塩職人の技がなければ、塩作りは成り立ちません」

ここには、現実離れした風景が広がっています。潟や池、幾何学的な形状の塩田が連なり、その色彩は一日を通して変化します。ピンクや赤に染まる水面もあれば、果てしない空の青を映す水面もあります。「初めてここに来ると、空と海の間に浮かんでいるような気分になります」と、アラン・ベルテロは語ります。

この果てしなく広がる幻想的な景色を支えているのは、緻密で地道な職人の仕事です。海水は塩として収穫されるまでに、水路や塩田を35km近く移動します。塩田から塩田へと移るにつれて塩分濃度が徐々に高まり、やがて結晶化に適した状態になります。

多くの消費者にとって、塩は毎日使うありふれた調味料ですが、ワインやチーズ、オリーブオイルと同じように、塩にも産地による特徴があります。「塩はどれも同じではありません。産地の気候や風土、作り手の技を物語っているのです」と、アラン・ベルテロは力説します。

太陽と風の力で自然に作られるカマルグの塩は、製法も独特です。だからこそ、ユニークな味わいと個性が生まれるのです。「カマルグの塩には、他にはない唯一無二の持ち味があります」と、アラン・ベルテロは強調します。

 

塩田に浮かぶ「ホワイトゴールド」、フルール・ド・セル

塩田の産物の中でも、フルール・ド・セルは特別なものです。きめ細やかで軽やかなフルール・ド・セルは最高峰の塩とされ、特定の自然現象が揃うことで形成されます。「フルール・ド・セルは、暖かい時期に水面にできる薄い結晶の層です」と、アラン・ベルテロは説明します。

この層が表れるのは、日中に蓄えられた熱と夜の涼しさが重なる明け方。塩田の水面に、細かな結晶が薄い膜のように浮かぶのです。まさに「ホワイトゴールド」と呼びたくなる光景です。

この点が、粗塩との大きな違いでもあります。粗塩は塩田の底でゆっくりと結晶化し、密度の高い立方体を形成しますが、フルール・ド・セルは水面ですばやく結晶になります。粒は細かく、軽く、ほろりと崩れます。「カマルグのフルール・ド・セルには独特の風味がありますが、主張しすぎることはありません。繊細でシャリッとした結晶が口の中で溶け、余韻を残します」。シェフや食通の間で人気があるのは、まさにこの食感です。

水面から塩田の変化を読み取る

エグ=モルトの塩職人の仕事は、カマルグの歴史と深く結び付いています。毎朝、アラン・ベルテロは長年の経験で身につけた手順に沿って塩田を見回り、一日の仕事を始めます。塩作りには技術だけでなく、観察力が欠かせません。「まずは風と水位、そして結晶の状態を確認します。それによって、その日の仕事が決まります」

経験を積むにつれて、塩職人は水の色や水面の様子、風向き、塩分濃度の変化など、さまざまな手がかりを読み取れるようになります。「塩職人は何よりもまず、塩田の状態の読み取り方を覚えなければなりません」。パリ中心部に匹敵するほどの広さを誇るカマルグの塩田では、この高度な技が求められます。

中世以来、この広大な塩田では「太陽と風によって一連の塩沼で海水が少しずつ蒸発し、塩の結晶ができる」という単純な自然現象を生かしてきました。塩職人は一年を通して、その過程を見守ります。「水の流れや塩分濃度を確認し、堤防や水路を維持管理します。そして収穫時には、塩の品質を守るために手を加えます。塩職人の役割は塩の収穫だけではありません。自然の力や季節、カマルグの生態系を深く理解し、先人から受け継いだ技を守る者なのです」と、彼は強調します。

この仕事には、伝統的な技や手仕事に加え、幅広い技術が求められます。さまざまな計測や水理計算から、水流の調整まで、塩職人は現場のスタッフであり、製塩を統括する技術者でもあります。

気候条件を見極めて収穫

アラン・ベルテロにとって、塩は単なる鉱物ではありません。海、太陽、風、そして人の細やかな手仕事が織りなす絶妙なバランスから生み出されるものだからです。自然の力を借りて、土ではなく水から育てる農業のような営みです。

だからこそ、塩作りには粘り強く取り組まなければなりません。エグ=モルトでは、製塩のサイクルが丸一年に及びます。「仕事をしてくれるのは太陽と風なんですけどね」と、アラン・ベルテロは冗談めかして言います。

とはいえ、フルール・ド・セルの収穫は大変な仕事であり、時期を見極める必要があります。収穫できるのは、真夏のわずか8~10週間だけ。全工程の中でも特に難しい作業です。「条件がぴったり揃う時間帯を逃してはいけません。早朝になることが多いですね」

朝早くに収穫するのは、日が高くなるにつれ、風や暑さによって結晶の形が変わってしまうからです。繊細な歯触りを守るため、夜明けに収穫します。意外に思われるかもしれませんが、今でもすべて手作業です。「フルール・ド・セルの収穫に機械は使いません。スコップを使って、手で採るのです」

 

変わりゆく気候への対応 

製塩業も他の農業と同じように、ますます予測が難しくなる気象条件への対応を迫られています。「伝統の技を守りながら、先の読めない気候にどう対応するかが最大の課題です」と、アラン・ベルテロは強調します。

雨も依然として大きな懸念の一つです。激しい雨が数回降るだけで蒸発のペースが著しく鈍り、収穫が遅れることもあります。「よく話題になるのはブドウ畑や果樹園ですが、製塩業も天候の影響を受けます」と、彼は語ります。

例年とは違う風の吹き方や猛暑も、塩田の自然のバランスを脅かします。しかし、気候が変動しても、目指すところは同じ。大切な環境を守りながら、塩を作るだけです。エグ=モルトの塩田は、塩を作るだけの場所ではありません。この土地ならではの動植物が生息し、多様な生態系が育まれている、豊かな生物多様性の源でもあります。「ここでは、誰もが自然に逆らわず、自然とともに働いています」

塩田で40年以上働いてきた今も、アラン・ベルテロの情熱と信念は変わりません。一粒一粒の塩の向こうには、地元の風景や物語、そして世代を超えて受け継がれてきた伝統が息づいています。

目立たずとも欠かすことのできない伝統があるからこそ、カマルグは単なる塩の産地ではなく、豊かな味わいを育む聖域なのです。

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