フォアグラは、フランス料理を象徴する食材のひとつです。フォアグラは洗練の象徴であり、代々受け継がれてきたその製法は、2006年より文化・美食的遺産としてフランス法で保護されてきました。フォアグラはフランスの風土(テロワール)に深く根ざした食の伝統であり、同時にフランス経済を支える大きな産業でもあります。
フォアグラの歴史とその製法
フォアグラの歴史は古く、古代エジプトやローマ時代にまで遡ります。17世紀になるとフランスの宮廷料理として洗練を極め、高級食材と見なされるようになりました。以来、フランスは世界最大のフォアグラ生産国の地位を揺るぎないものとしてきました。2023年には1万2000トン超と、世界生産量の約60%を占めています(France Agrimer)。
その生産工程は、代々受け継がれてきた伝統技法に支えられています。また、フランスの生産者は、ラベル・ルージュ、IGP南西フランス、IGPペリゴールなどの厳格な規格や品質認証に従い、真正性、トレーサビリティ、動物福祉、そして伝統を守ってきました。鳥インフルエンザ発生などの困難に直面しながらも、フォアグラ産業は伝統を守りながら、未来につなげるための工夫と進化を続けています。
この高級食材には、鴨またはガチョウの肥大した「脂肪肝」(これが「フォアグラ」の語源)を使用します。フォアグラの99%はミュラール種の鴨で作られています。一方、繊細な風味のガチョウのフォアグラは希少で特別な日のごちそうとして珍重されています。
フランス産フォアグラの選び方
フォアグラが最も多く消費されるのはクリスマスと大晦日。祝いの食卓に欠かせない存在です。絹のようになめらかな食感と、濃厚な味わいを持つフォアグラは、食卓を囲む歓び、そしてフランス流の暮らしの楽しみ方を体現する一品。フォアグラは、使われる鴨やガチョウの違いはもちろん、仕込みや調理法によって実にさまざまな表情をみせる食材です。こうした分類はすべて厳格な基準のもとで管理されており、素材そのものと調味料だけで作られた製品のみが「フォアグラ」と呼ぶことができます。それでは、フォアグラのラベルの見方を分かりやすくご紹介しましょう。
「フォアグラ・アンティエ」と「ブロック・ド・フォアグラ」の違いは?
「フォアグラ・アンティエ」は、1羽の肝臓を丸ごと使って作られます。味付けには、塩、砂糖、スパイス、リキュールやワインが使われます。フォアグラの王様ともいえる「アンティエ」は、厚めに切って軽く焼いたブリオッシュやジンジャーブレッドにのせるのが一般的です。一方、ラベルに「フォアグラ」とだけ表示されたものは、その次のカテゴリーにあたり、2羽以上の肝臓を合わせています。きれいなマーブル模様が特徴で、スライスしたときの見た目の美しさで人気があります。
そしてもうひとつが、「ブロック・ド・フォアグラ」。こちらは小さく切ったフォアグラを混ぜ合わせた、上品なペースト状のタイプです。「アンティエ」よりもクリーミーで、淡いマーブル模様が楽しめます。
ほかにも、フォアグラを75%以上含む「パルフェ」、「パテ」、「ムース」、「ガランティーヌ(フォアグラを50%以上含む)」などの加工品があり、初めてフォアグラを試してみたい方にもぴったりです。
「生」、「ミキュイ」、それとも缶詰?
自宅で調理するなら「生フォアグラ(フォアグラ・クリュ)」、またフランス国外で一般的な、そのまま食べられるタイプもあります。
次に、「フォアグラ・ミキュイ」は、たいてい瓶やテリーヌに入っています。低温でじっくり加熱されています。とろけるような食感で、「缶詰タイプ」よりも風味が濃厚です。缶詰タイプは、高温で加熱するため、よりしっかりとした食感になります。数年間保存できるうえ、時間とともに味が熟成していきます。まるで上質なフランスワインのようですね!
© Justin Ong
フォアグラの食べ方と料理法
フォアグラは、それ自体が十分に濃厚で贅沢な味わいを持つため、温かいブリオッシュやバゲット、ジンジャーブレッドにのせるだけで美味です。薄くスライスしたフォアグラをさっと焼けば、料理の豪華なトッピングとなります。フランスのシェフたちは、フォアグラを美しく演出し、フランス美食の頂点を象徴する存在として世界に発信してきました。中でも象徴的なのが、トゥルヌド・ロッシーニ。厚切りのフォアグラをとろりと溶かし、そこに削りたての黒トリュフが香る美食の定番です。ロンドンのフランス料理店レスカルゴ(L’Escargot)で味わってみてください。
ニューヨークでは、フランス人シェフのアレクシア・デュシェーヌがル・シェーヌ(Le Chêne)で、フォアグラ・ミキュイにアーティーチョークと焦がしグレープフルーツをまとわせた一品を。過去数十年、フォアグラはよりカジュアルな料理でも使われるようになりました。その象徴といえるのがDBフォアグラバーガーです。ここでは、2001年にシェフの ダニエル・ブールーが生み出したフレンチ風アレンジのハンバーガーを楽しめます。赤ワインで煮込んだショートリブにトリュフ、そしてフォアグラが贅沢に重ねられています。パリの名店「コントワール・ド・ラ・ガストロノミー」(Comptoir de la Gastronomie)では、フォアグラへのオマージュともいえる、鴨のフォアグラのカルパッチョや、トリュフソースを添えたフォアグラのラビオリなどが楽しめます。
🍷フォアグラにぴったりなフランスワインとのペアリング
フォアグラは、フランスを代表するワインと組み合わせることで真価を発揮します。その濃厚なコクとバターのような舌触りを、ワインの甘みや酸味、複雑な香りが引き立ててくれるのです。ボルドー地方で作られるAOPソーテルヌは定番中の定番ですが、南西地方のモンバジャックやジュランソンも優れた甘口ワインです。祝祭シーズンなら、スパークリングワインもよく合います。例えば、AOPシャンパーニュ・ブリュットやAOPクレマン・ダルザスなど、各地のスパークリングもおすすめです。
世界へ広がるフォアグラ:最高の美食アンバサダー
フォアグラといえば、南西地方、ペリゴール、そしてアルザス 。ここで作られるフォアグラは、欧州全域、そして日本からブラジルまで世界中の多くの国へ輸出されています。もはや、国内消費用としてだけでなく、輸出の主力品にもなっており、2023年には3400トンが日本やブラジル、米国に輸出されました。
フォアグラはその歴史や味わい、文化的価値ゆえに、いまも豊かなフランスの美食の宝のような存在です。素朴なテリーヌとしても、ミシュラン星付きレストランの特別な一皿でも、フォアグラはフランス料理を代表する存在であり、その美食文化を世界に伝える役割を果たしています。
🛒 フランス産フォアグラを買える店舗
スペイン
La Franchuteria(マドリード)
La Boulette(マドリード、オンライン販売)
英国
Fine Food Specialists(オンライン販売)
米国
The Artisan Food Company(オンライン販売)
🇺🇸 USA
The Artisan Food Company, online
Contributor
エディター