ドローム県はサウ(Saoû)村のLa Chèvre qui Saoûritで、オーガニックのピコドンチーズを生産しているイネス・ド・ランクールとダニエル・ジルを訪ねました。ピコドンとはこの地方特産の小ぶりで平らな山羊のチーズのこと。さて、どんなお話が聞けるのでしょう。

Picodon, the little round cheese

朝 7 時 30 分。道中で朝ごはん用のパンを買い、イネス・ド・ランクール(Inès de Rancourt)とダニエル・ジル(Daniel Gilles)が待つ農場に到着しました。サウ村の出口に位置する山羊小屋では、55 頭のアルパイン種の山羊が搾乳を待っていました。

搾乳された山羊乳はおよそ 週間でピコドンチーズへと変わります。ピコドンは、生乳からつくられる小さなチーズです。AOP原産地呼称保護)ピコドンのおよそ 150 の生産者はフランス南東部のドローム県、アルデッシュ県、ヴァルレア、そしてバルジャックの小郡にまたがっています。

© ©PHILIPPE VAURÈS SANTAMARIA

農家の日常 

「毎朝、私たちは8時頃に山羊たちのところに行きます。山羊は 頭につき、毎日 リットルの乳を出してくれます。その乳を仔山羊と私たちで分け合います。仔山羊と私たちでは、どちらか先に起きた方が早くを手に入れることができるのです!」と、ダニエルは冗談めかして言います。ダニエルは、10 年ほど山羊の飼育をています。「15 kg ほどに成長すると、離乳させます。20 頭ほどを手元に残しその他の仔山羊は、個人やレストラン関係者に販売したり、私たち自身で料理します」と、イネスは教えてくれました。イネスは、エネルギーと情熱にあふれています。夫妻は山羊たちの餌のほとんどを自分たちで生産しています。ダニエルは大麦と干し草を栽培し、ヤギが外で食べる草を補っています。天気が良ければ、山羊たちは周辺の土地の草を食べます。イネスはサウの森にも山羊を放牧します。山羊はそこでのびのびと過ごし、森の植物を食べることができます。イネスによると「春と秋に山羊を放牧してドングリを食べさせると、ミルクの味が濃くなる」のだそうです。

© ©PHILIPPE VAURÈS SANTAMARIA

ミルクからチーズになるまで 

イネスとダニエルの農場では、交配は自然に発生します。月になると、雌の群れの中に雄ヤギが送り込まれ、年にもよりますが、月ころから出産が始まります。続いて、搾乳、そしてチーズの生産が始まるわけです。搾乳には毎日 時間半程度かかります。老いた牧羊犬のインが見守る中、山羊たちは順番に搾乳を終えて仔山羊のもとへ戻ります。集められたミルクは、前日の凝乳工程で得られたホエイ(乳清)と混ぜられます。20°C まで冷えたところで、凝固剤であるレンネット(凝乳酵素)を加えます。これによりミルクが固まり、カード(凝乳)になります。「翌日、このカードを形成用の型に注ぎ入れます。1 ~ 日後、チーズを型から取り出し、塩をふり、網棚に並べて乾燥させ後、熟成室に移し熟成させます。この間にカビが増殖します。このチーズ工房の環境から生み出される微生物、つまりこのカビが私たちの仕事の独自性を生み出し、私たちのピコドン個性をもたらすのです」とイネスは説明してくれました。AOP を名乗るためには、チーズを 14 日間以上熟成させなければなりません。チーズができあがると、イネスとダニエルは、サウ村のプラタナスの木の下で毎週土曜日に開かれる小さな市場で、クリーム色をしたこのオーガニックチーズを販売しています。この市場にも行ってみたいものです。スパイスとナッツの風味が特徴のピコドンは、天気の良い日に、サン・ジョゼフの白ワインと合わせると格別です!

© ©PHILIPPE VAURÈS SANTAMARIA

La Chèvre Qui Saoûrit 
180, route de Crest, 26400 Saoû 
農場では毎朝、サウ村の市場では土曜の朝に販売

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