モン・サン・ミッシェル湾沖で養殖される「ブショーのムール貝」は、フランス国内で水産物として初めて原産地統制呼称(AOC)に認定され、その後EUレベルの保護原産地呼称(AOP)に指定されました。養殖から収穫まで、資源と環境を保護するため、さまざまな取り組みが行われています。今回は、このブショーのムール貝のポイントについて、原産地呼称委員会のニコラ・ルボー会長に聞きました。

Bouchot_Mussels

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7月はモン・サン・ミッシェル湾沖で養殖される「ブショーのムール貝」のシーズンの始まりです。例年同様、AOPの認証基準を全て満たすことが求められます。このムール貝の養殖は自然の力を利用しており、木製の杭に付けた稚貝は荒波に揉まれながら、11カ月かけて4センチを超える大きさになるまで育ちます。収穫期には、その肉はきれいなオレンジ色、柔らかな触感、濃厚な風味になります。

準備に1年間

養殖には、シャラント県で捕獲された天然ものを使います。稚貝はココナッツ繊維製のロープに付着していて、3月から8月までここで育ちます。その後ブルターニュ地方の海岸へと運ばれ、ロープのまま、ル・ヴィヴィエ・シュル・メール港で43の認定養殖業者に引き渡されます。一部はその日のうちにブショー式の杭に巻き付けられます。また、残りは「生育用の大きな台」で、定期的に海水に浸けられます。木の杭は以前はオーク製でしたが、現在ではブラジルボクが使用されています。ムール貝の付着したロープを巻き付けるのは、杭の半分強ほどです。これにより、湾の環境を守り、品質を一定に保ちます。ムール貝は外敵や潮の流れ、暴風雨から守るために網で覆われ、冬から翌春にかけて生育します。

厳格な品質管理

6月になると、検査やチェックを何回も行い、ムール貝の品質を確認します。ムール貝は海水中の植物プランクトンを餌としていますが、モン・サン・ミッシェル湾の水質は極めて清浄です。この地域は世界でも潮の干満差が特に大きく、淡水が流れ込むため、独自の生態系と生物多様性が守られています。ムール貝が衛生面、物理面、味覚面の全ての条件を満たしたら、いよいよ収穫です。

ムール貝の収穫

収穫期は7月下旬から1月下旬まで、年によっては2月下旬まで続きます。この時期に、ロープ長で247キロメートル分、杭にして31万8,000本分のムール貝が収穫されます。家業を継いでムール貝の養殖を手掛けるニコラ・ルボー氏は「水陸両用船のおかげで、収穫作業が大きく改善した」と言います。これにより、養殖業者は満潮を待たずに海に出られるようになりました。水陸両用船は大型のタイヤを備えており、砂地を数キロ移動し、海に出ることができます。一人が船を操縦し、別の人が油圧アームを使ってムール貝を引き上げて木箱に入れます。ムール貝は岸に着くと、湾内の海水をポンプで引き込んだプールに搬入されます。そして、その日のうちまたは遅くとも翌日までに手作業で洗浄、選別されます。「収穫量約8トンのうち、実際に出荷されるのは6~7トンです。」(ルボー氏)残りはAOPの基準を満たさないサイズの小さなものや、泥、貝殻に付着した甲殻類、カニなどです。付着物を落として洗浄後、品質を保証する衛生ラベルを貼付した5~10キロ単位の袋に詰めます。「陸と海が織りなす特別なバランス。このモン・サン・ミッシェル湾の特性は、ムール貝の味わいにも反映されています。」(ルボー氏)そのため、真の愛好家なら味わいだけで湾内のどこで収穫されたかを言い当てられるのです!ブショーのムール貝は、まさにテロワールの賜物といえます。

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