カスレは食べられない?いえいえ、そんなことはありません。今のところ南仏へ旅行する予定はないとしても、フランスの伝統料理カスレは、思ったより簡単に家庭でも作れます。今回は料理人6人に、このボリュームたっぷりの美味しい煮込み料理を手作りするためのコツを聞きました。
シェフの一人から家庭で作れるカスレのレシピも提供してもらいました。このレシピで、あなたの味を作ってみてください!それでは、鍋を用意しましょう!

食材は別々に調理するべし
「一番重要なことは、食材を別々に調理して、風味を引き出すこと」と話すのは、YouTubeチャンネルLet's CookINを主宰するシェフ、キャスリーン・オブライエン・プライス氏。「材料を鍋に放り込めば、素晴らしい料理ができるというのは誤解です。料理は、技法と味を組み合わせることによって美味しくなるのです。」オブライエン氏は、鍋に材料を入れ過ぎると蒸気が発生し、食材の色や味わいが損なわれると言います。また彼女は、鍋の温度を調節し、沸騰させないようにすることだと強調します。沸騰すると、タンパク質が固くなってしまうのです。
肉はあらかじめ焼くべし
米パームビーチの「カフェ・ブールー」(有名シェフ、ダニエル・ブールー氏経営)で腕を振るうベルギー人シェフ、ディーター・サミン氏は、家庭で美味しいカスレを作るには、赤身肉をブレゼ(蒸し煮)する前に焼くことが絶対に必要だと言います。[シェフによると、鍋はスロークッカーよりも、「調理が速く、1台で何役もこなす」電気圧力鍋の方が速いのでお薦めとのこと。]また絶対に譲れない食材として、ベーコンや豚バラ肉、そして良質の豆を挙げました。オブライエン氏も、肉を焼くと少し時間がかかりますが、味わいはより複雑なものとなるため、手間をかける価値はあると同意しました。
脂肪を恐れるな
ニューヨークのシェフ、デリック・パエス氏によると、料理学校でまず覚えたことは、カスレを作る時は肉の脂身をある程度残して切ること。「(脂身を除去し過ぎると)パサパサして味気なくなってしまう」とのことです。パエス氏は、肉は鴨、豚肉、ラム肉から選ぶが、個人的にはこの3種類をバランス良く組み合わせたものが好みだと言います。
家にある材料で作るべし
「カスレは残り物を煮込んだフランスの田舎料理です」と説明するのは、リマーカブル・キュイジーヌ(Remarkable Cuisine)のシェフ、マーク・マクリーン氏。「鴨のコンフィが手に入らなければ、鶏肉やコーニッシュ種の雌鶏で代用できます。」マクリーン氏は、この料理のポイントはさまざまな要素を組み合わせて、絶妙な滋味溢れる味わいを出すことだと説明します。
「たいていのレシピに言えることですが、まず食品棚を開けて、心を開き、創造するのです。」そして、究極的に料理を美味しくするのは、さまざまな要素の「マリアージュ」だと言います。注:マクリーン氏は、煮込み料理に絶対必要なのは、根菜、ハーブ、ストックであり、ここを押さえておけば、あとは食材の追加や代用がきくと指摘します。
出汁が鍵
リヨンを拠点にクッキングスクールを主宰するルーシー・ヴァネル氏(ブログ「Lucy's Kitchen Notebook」)は、必要ないと言う人もいますが、ブイヨン(スープストック)は家庭で美味しいカスレを作る上で重要な要素だと考えています。「出汁のベースは、肉(豚の頬肉や鴨の首肉)と軟骨、鶏ガラ、豚皮。これらを使った旨味たっぷりのスープが、単なる豆のオーブン料理をカスレへと昇華させるのです。」ヴァネル氏によると、電気圧力鍋に肉、骨付きスネ肉、骨をハーブや野菜と重ね、かぶるくらいに水を入れ、30分間高圧調理すれば、簡単に自家製ブイヨンが作れるとのことです。
冷凍野菜やカット野菜でもOK
オブライエン氏は、カスレは材料が多いため、調理に尻込みしてしまう人が多いと言います。「カスレなどの煮込み料理は、刻む、焼く、炒める、煮るの四つのステップで作る料理です」と彼女は言い、冷凍野菜やカット野菜を使えば、最初の手順を省くことができるので、調理時間を短縮できると説明します。[注:オブライエン氏によると、カット野菜にまったく問題はないが、ニンニクと玉ネギは風味が全く異なるので新鮮なものの方が良いとのこと。]
比率を知るべし
ヴァネル氏は、電気圧力鍋の場合、3分の1がコツだと言います。「時間は1/3だと覚えておいてください。つまり、レシピに煮込み時間1時間半とあれば、電気圧力鍋ではその3分の1の30分で調理します。」火が通りやすい食材があること、そして電気圧力鍋を使う場合は液体の量は大幅に少なくて済むことに注意するよう指摘します。
アレンジしてみよう
米アトランタでアリホ・ケータリング(Arijo Catering)を立ち上げ、エグゼクティブ・シェフを務めるハリエル・ユージーン氏は、伝統的なフランス風カスレにアレンジを加えることを提案します。「多くの人がこの伝統レシピに、手順を省いたり食材を代用したりして、さまざまなアレンジを加えています。」彼女のハイチ風アレンジは、伝統の素材や調理法を使いつつ、ハーブや自然食材を加えたものです。*「時間がない時は、缶詰の煮豆を使えば調理時間が半分になります。」その場合、煮豆は水ですすいで水切りする必要があると言います。
*ハリエル・ユージーン氏の「ハイチ風カスレ」のレシピはこのページの末尾にあります。
食感が大事
パエス氏は、「見落とされがちなのが、豆の調理方法です」として、豆は調理の24時間前に浸水させ、鍋に入れる前にしっかりと水を切る必要があると言います。豆はクール・ブイヨン(ベルモットとブーケ・ガルニで作る)で煮ます。また、豆は(完全にゆだった状態の)3分の2程度になるまで、下ゆですることを勧めています。「豆の形状がだいたい残る程度で、豆が浸る程度の煮汁を残しておきます。これで、他の食材と合わせる際にその煮汁を使うことができます。」
また、表面にパン粉を振りかけて、こんがりとした焼き目を作ることで、出来上がりの食感が良くなります。しかし、カスレを理想的な食感にするには、豆は他の食材と合わせる前に冷ますことが最も重要だとパエス氏は指摘します。「こうすることで、カスレが焼き上がったときに、とろりとして濃厚な美味しさが生まれます。あとは、おまけのようなものです!」
忍耐強く待つべし!
「とにかく時間をかけてください。美味しいカスレを作るには、時間と手間がかかります」と言うのはサミン氏。パエス氏は、下ごしらえから完成まで2時間半から3時間半はかかると言います。カスレを作りながら、赤ワインを開けて家族や友人と楽しめば、素晴らしい夜となるでしょう。「カスレみたいに、フルボディのしっかりした赤ワインがお薦めです。楽しんでください!」
「少しばかり時間と手間をかけて作るスープや煮込み料理は、とても美味しい上、作り置きにも最適な、私のお気に入りです」とオブライエン氏は言います。そして「時間をかけるほど美味しくなります。冷凍保存もできますし、味のバリエーションは非常に豊富。基本的な調理法を学べば、簡単に作ることができるのです。」そう言ってシェフは話を結びました。
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