オーヴェルニュについて
オーヴェルニュは、フランス中部に位置する山岳地帯です。2016年以降は、広域の行政区域であるオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏の一部となっています。休火山(ピュイ)が連なる雄大な景観をはじめ、山並みや青々とした牧草地、うっそうとした森、こんこんと湧き出る温泉など、豊かな自然に恵まれたオーヴェルニュは、ハイキングや自然を愛する人々に人気の旅先です。
© Andréa Villiers
オーヴェルニュの大部分は農村地帯で、その土地柄は、素朴で味わい深い郷土料理や職人が手がける加工食品にも表れています。中でも有名なのが、緑豊かな山の牧草地で育った牛のミルクから作られる伝統的なチーズです。もっとも、肥沃な土壌に育まれたオーヴェルニュの特産品は極上のチーズだけではありません。風光明媚な谷や緑あふれる高地には、家族経営の畜産家(肉類)や野菜農家、酪農場、ワイナリー、そして上質な山のハチミツを生産する養蜂場が点在しています。一方、この地域最大の街クレルモン=フェランは、活気あふれる学園都市。伝統的なオーヴェルニュ料理から、ミシュランの星を獲得したモダンな料理まで味わうことができます。
オーヴェルニュの特産品
チーズ好きにとって、オーヴェルニュはまさに楽園です。この地域では、伝統的な製法によって特定の地域で生産された食品に与えられるEUの認証、原産地呼称保護(AOP)を取得した5種類のチーズが生産されています。その代表格の一つが、AOP サン=ネクテールです。モン・ドール山地で作られる圧搾製法の牛乳チーズで、28日間熟成するとナッツのような風味が生まれ、表皮が白カビに覆われます。
AOP カンタルはフランス最古のチーズの一つで、円筒形に成形して熟成させます。バターのような若い味わいを楽しめる30日熟成のものから、濃厚な風味とほろほろ崩れる食感が特徴の240日間熟成させたものまであります。AOP ブルー・ドーヴェルニュは、緑豊かな山の牧草地で育った牛のミルクから作られるフランス産ブルーチーズ。クリーミーな身に青緑色のカビがついています。チーズ好きにはAOP フルム・ダンベールもおすすめ。ローマ時代から変わらぬ伝統製法で作られている、マイルドなセミソフトタイプのブルーチーズです。 そして、有名な5大チーズのトリを飾るのがAOP サレールです。毎年4月15日から11月15日までの期間だけ作られる季節限定の生乳チーズで、「ゲール」と呼ばれる昔ながらの木桶を使って製造されます。
オーヴェルニュは、上質な牛肉や豚肉の産地でもあります。オーヴェルニュ北部のアリエで育つシャロレー牛は、牧草飼育牛ならではの豊かな味わいが特徴です。メザン産ファングラ牛(AOP)の産地は中央山塊で、オーヴェルニュ南部からアルデシュにまたがる地域で育てられています。やわらかな肉質、美しい霜降り、奥深い味わいで高く評価されています。 豚肉もこの地方の食文化に欠かせない食材です。豚肉と野菜を使ったボリュームたっぷりの煮込み料理「ポテ・オーヴェルニャット」をはじめ、ソーセージや乾燥熟成させたジャンボン・ドーヴェルニュ IGPなど、さまざまな形で親しまれています。
オーヴェルニュでは、さまざまな果物や野菜も栽培されています。ホワイトアプリコットは、この地域の特産品。晩夏にはブラックベリーや野生のブルーベリーが豊富に実り、初秋になるとリンゴが旬を迎えます。ジャガイモとキャベツは伝統的なオーヴェルニュのレシピに欠かせない食材。シュー・ファルシ(キャベツの肉詰め)、トリュファード(薄切りのジャガイモと地元産のフレッシュチーズ「トム・フレッシュ」を使った料理)、アリゴ(チーズを練り込んだなめらかなマッシュポテト)などに使われます。
オーヴェルニュならではの独特な地形から、世界的に知られる2つの特産品も生まれました。AOP ル・ピュイ産緑レンズ豆は、ナッツのような風味があり、プロのシェフや料理愛好家に人気があります。この小粒の緑レンズ豆は、日差しに恵まれた高原と肥沃な火山性土壌が広がるル・ピュイ=アン=ヴレ地方でローマ時代から栽培されてきました。さまざまな料理に使える緑レンズ豆を味わうなら、豚肉や野菜と一緒にじっくり煮込んだ「プティ・サレ」がおすすめです。
一方、オーヴェルニュの火山地帯には豊かな水が湧き出し、上質なミネラルウォーターを育んでいます。その代表格が、火山の町ボルヴィックの天然水です。
食通におすすめしたいオーヴェルニュのグルメ体験
オーヴェルニュを訪れたら、さまざまな方法で伝統的な食文化に触れましょう。ここでは、おすすめのグルメ体験をいくつかご紹介します。
- 地元のベーカリーで、焼きたての「トム・ブリオッシュ」(フレッシュチーズを使った甘いブリオッシュ)を味わう
- 秋にはガイドと一緒に森を歩き、野生のキノコや食べられる植物の安全な見分け方を学ぶ
- 美しい田園風景の中を走るオーヴェルニュのチーズ街道を巡り、名高いAOPチーズを作る地元の酪農場や乳製品工場を訪ねる
- 「ビュロン」を改装した宿に泊まり、レストランで食事を楽しむ。「ビュロン」とは、かつて酪農家が利用していた山間部の小さな石造りの小屋で、現在ではコテージや素朴なレストランに生まれ変わっている
- 美味しいお土産を探す。オーヴェルニュ名物のパート・ド・フリュイ、地元の山や森で採れるハチミツ、箱入りのピュイ産レンズ豆、栗のリキュール、AOC コート・ドーヴェルニュワインなどがおすすめ
© Adrien Brun
オーヴェルニュの食文化を自宅で楽しむ方法
現地まで足を運ばなくても、オーヴェルニュの味を楽しめます。家族や友人のために、オーヴェルニュの味覚をたっぷり盛り込んだ素朴なごちそうを作りましょう。ボリューム満点のメニューなので、しっかりお腹を空かせておくこと。週末に田舎をハイキングした後、のんびり食卓を囲むときにもぴったりです。まずは、洋梨のロースト、ブルー・ドーヴェルニュとマーシュサラダ添えを、シンプルな前菜としてどうぞ。メインには、メザン産ファングラ牛を用意してゲストを驚かせましょう。付け合わせにはアリゴやトリュファードがおすすめです。
デザート好きなら、オーヴェルニュで愛されている長方形のアップルパイ「ポンプ・オ・ポム」はいかが。食後にはチーズボードをどうぞ。オーヴェルニュの代表的なチーズを盛り合わせ、コート・ドーヴェルニュのさまざまなワインとともに味わいましょう。
Contributor
Food and travel journalist