IGP ゲランド産フルール・ド・セル:天日塩田で作られる海の恵み

By Stevan Paul

ゲランド産フルール・ド・セルの繊細な結晶を舌の上に乗せると、浜辺や海で過ごした屈託のない子ども時代の味がします。 

Sel Noirmoutier Vendée

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子どもの頃、ビーチで過ごす時間は何よりも幸せなひと時でした。フランスの大西洋岸での長い夏休み。私の髪は強い日差しの下で明るい藁色になり、海の上に浮かんで波が来るのを待ちながら、暖かくミネラル分を含んだ、からりとした潮風を胸いっぱいに吸い込んでいたものです。前や横から押し寄せてくる大きな波。波間には海水が渦巻き、吸い込まれるような波の谷からはきらめく泡が舞い上がっていました。私は迫りくる青緑色の壁へと飛び込み、海の力でくるりと回転します。浜辺に戻ってからも、唇に残った塩の味を感じていました。

 

塩の味とは? 

専門的な官能評価で塩の味を分析する際は、ノスタルジーや感傷が入る余地はありません。まず、味の濃さ、香り、持続性を評価し、結晶の大きさと食感、口の中での味の広がり方も分析され、分類されます。塩は無臭のもあれば、カビのような苦い香りを持つこともあります。味はまろやかなものや、スッキリ、ピリッとしたもの、海藻やクレイ(粘土)、土壌の風味を持つものもあります。ゲランドの潮の結晶は雪のように白く、サクサクとした食感で、まろやかで塩味が持続し、まさに海を思い出させる風味です。これは、塩もワインのように産地の地理的条件や水、風、日差しによる特徴(テロワール)を反映しているためです。 

 

2000年以上前からの名品 - ゲランド産の塩 

ブルターニュ地方に隣接するペイ・ド・ラ・ロワール地方のゲランド半島の沿岸部には、フランスで最も有名な塩田があります。ここでは、大西洋の海水からグロ・セル(粗塩)そしてフルール・ド・セル(塩の花)を採取しています。ゲランド半島の塩作りの歴史は2,700年前に遡り、ブルターニュの「白い金」はローマ時代から高級品としてもてはやされていました。塩は、味付けだけでなく、魚や肉の塩漬けなど、防腐作用もあるため、重宝されてきました。後には、塩田から水路を通ってドイツ帝国との国境まで運ばれ、取引されるようになりました。これにより、ブルターニュは繁栄し、塩田は相続により代々継承されてきました。1960年代には、工業化の進行や若者の都市への流出により、ゲランドの伝統的な塩作りは衰退しました。しかし1970年代になると、ヒッピーやオルタナティブ派など、いわゆるババクールと呼ばれる層がこの風景を再発見し、年長者の知識や助けを借りて、伝統的な塩作りの技法を復活させました。現在、大西洋岸にて手作業で収穫される塩の80%以上がゲランド産です。 

 

ゲランドの塩の収穫方法 

海と太陽、風、そして職人技が調和し、先人が大西洋岸に切り拓いた塩田で作られるゲランドの塩。この粘土質の土地には、太陽の下で輝く7,000もの塩田だけでなく、独自の生態系の保護動植物が織りなす自然景観が広がっています。ペン・ブロン岬とひなびた漁村のル・クロワジックの間には、広大な海水貯水池があり、潮の満ち引きに合わせてエティエと呼ばれる塩田水路に自然に海水が流れ込みます。採塩池(ウイエ)では、太陽と風によって塩から水分が蒸発し、池の底に結晶化します。塩職人(パリュディエ)はシモージュという道具を使って、塩を深さ10~40センチの採塩池の端へと引き寄せ、専用の場所で直射日光のもと、まる1日乾燥させます。採塩池の底を乾燥させてはならず、天候や日照時間、風の強さを計算しながら水路や塩田の水位を調節し、塩の濃度を一定に保つという職人技が求められます。収穫は早くて6月から始まり、9月まで続きます。それ以外の季節は塩田をきれいに整った状態に維持しています。 

 

以上はグロ・セルの製造方法です。 淡い灰色を帯びていますが、これは不純物ではなく、微小な海藻やプランクトンによるもので、これらが塩に旨味を与えています!一方、フルール・ド・セルは雪のように白く、やさしく崩れる結晶で、自然の海塩を最も美味しく味わうことができます。この「塩の花」は、晴天の日の穏やかな海面に浮き上がる塩の結晶です。専用の採塩池で作られ、十分な日差し、適度な風、低い湿度という最適な天候条件の下でのみ、塩の花が咲きます。収穫するときは手作業で丁寧にすくい取ります。 

 

ゲランドの海塩の品質管理 

「ゲランド産の塩」と「ゲランド産フルール・ド・セル」は2012年からEUの地理的表示保護(PGI)の認定を受けており、原産地と品質が保証されています。 「ゲランドの塩」生産者組合はPGIの規則に従い、厳格な管理の下、無洗浄、無添加の地産の海塩を手作業で作っています。 

 

ゲランドの塩を料理に使う 

筆者はほぼ常に料理に海塩を使っています。それは、風味が良く、マグネシウムなどの微量元素が豊富だからというのもありますが、おそらく食卓塩や岩塩よりも「海が好きだから」というのが最大の理由です!海塩は2種類持っていれば十分です。良質な粗塩は値段も手頃で、日常的な調理や食卓用に使える万能塩です。パスタや野菜を茹でるときや、塩釜焼きにも使えます。そして、貴重なフルール・ド・セルは、料理の仕上げに使うのがおすすめです。野菜やステーキ、焼き魚、繊細なデザートの味が引き立ちます。 

 

海塩を正しく使うための3つのポイント 

  1. 塩は種類によって溶けるスピードが異なります。塩ははじめは控えめに。後から足す方が使いすぎを防止できます。塩加減は料理の温度によっても変わります。冷たい状態でちょうど良くても、加熱すると塩辛くなることがあります。ソースや煮込み料理などでは特に注意が必要です。煮詰まると塩分が濃くなるので、はじめは少量を使うようにします。 

     

  2. 料理界では、料理は塩味を付けるべきであって、塩辛くすべきではないという格言があります。私はこれに一言加えて、滋味深いスープや茹でたジャガイモ、シーフード、ローストチキンの皮など、「時にはしっかりとした塩加減が料理の味を引き立ててくれる」としたいです。 

     

  3. 最後に塩を入れすぎたら、どうリカバリーすべきかをお教えします。まろやかな、またはクリームやクレームフレーシュといった脂肪分の多い食材を加え、料理をかさ増ししたり、薄めたりすると良いです。脂肪分の多い(そして多少酸味のある)食材は、過剰な塩味を抑えるのに適しています。また、生のジャガイモのスライスや味付けされていない豆類など、でんぷん質の多い食材も塩分を後から吸収してくれます。 

 

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