記事

シャンパーニュ造りはダブルスタンダード?

Pierrick Jegu Pierrick Jegu, エディター 2022.12.16
A two-tier Champagne region?
この記事の中に
Champagne

シャンパーニュ

ワイン&スピリッツ
詳しく知る

シャンパーニュ地方のブドウ栽培を支える小規模ドメーヌと大手メゾン。両者はあらゆる点で対立しているように思われがちですが、それは表面的な見方に過ぎません。これら2つの「ファミリー」は、持ちつ持たれつの関係にあることを互いに認識しています。その実情を詳しくみていきましょう。

わずか数千本の自家製シャンパーニュを造るために猫の額ほどの畑を汗水垂らして耕す「小規模」ブドウ園と、毎年何百万本というシャンパーニュを世界中に流通させる大手メゾン――両者に共通点などあるのでしょうか?組織も人も多岐にわたるのがブドウ栽培地・シャンパーニュ地方の現実です。この地方には約16,000のブドウ園がありますが、その3分の2が栽培したブドウをネゴシアンに販売しており、自家製のシャンパーニュを製造・販売するレコルタン・マニピュランは全体の3分の1に過ぎません。大手シャンパーニュメゾン約350社の中にはブドウ畑を自社所有する企業もありますが、いずれもその莫大な需要に見合った規模ではないため、ネゴシアンとしてブドウ農家からブドウを仕入れています。つまり農家はこのような仕組みの中で十分な収入を得ることができる、というわけです。

ブドウ園 vs ネゴシアン 

何かにつけて強調されがちな「小規模」レコルタン・マニピュランとシャンパーニュメゾンの対立関係。例えばエペルネーのシャンパーニュ大通りに軒を連ねる高級シャンパーニュブランドの贅を尽くした本社と、家族経営の農園の質素な建物。あるいは明確なスタイルを有するブランド品で一般受けを狙う前者と、テロワールやヴィンテージを前面に押し出す小規模農園……。こうしてみるとシャンパーニュメゾンと個々のドメーヌの間には溝があり、同じ世界にいながら接点がないかのような印象を与えるかもしれません。しかしこうした見方はまったく的外れではないにしても、いささか誇張されているきらいがあります。もう少し違った角度から眺めてみましょう。

メゾンは世界的成功の立役者

ここで押さえておきたいのは、第一にすべてのメゾンが巨大企業というわけではなく、中には「大きな」ドメーヌと同規模のメゾンも存在するということ、そして第二にメゾンとドメーヌが互いに支え合っているということです。つまり多くのブドウ園は、この地方特産のシャンパーニュが世界中にその名を轟かせた背景に大規模シャンパーニュメゾンの貢献があり、この絶大な知名度の恩恵にあずかっていることを認識しているのです。そして両者の協力関係はこれのみにとどまりません。

ブドウ園が支えるテロワール

1015年ほど前から、それまで忘れられかけていた概念が再び大きな注目を集めています。それはテロワール!長きにわたりシャンパーニュ地方のブドウ生産関係者は、それほど手をかけなくても良質なブドウが収穫できるのだからこれで十分だと考えてきました。複数のブドウ品種や醸造年の異なるワインのブレンドど、カーヴでの「錬金術」も醸造責任者の裁量に任されていたのです。そんな中、アンセルム・セロス、ソフィー&ピエール・ラルマンディエ、フルーリー家など一部のパイオニア的ブドウ園がテロワールに再びスポットライトを当てました。そこに込められた思い――それは環境により一層配慮し、植物や果実の持ち味を引き出したこだわりのブドウ栽培を通じてテロワールを存分に表現すること。彼らはこのテロワールを代表する極めて良質なブドウの収穫を目指し、カーヴでもブドウ本来の性質を損ねないよう配慮しました。この取組みは大成功!それまで大手シャンパーニュメゾンが幅を利かせていたワイン専門店や星付きレストランのワインリストにも彼らのシャンパーニュが名を連ねるようになったのです。しかも最近ではこのテロワールという概念を前面に押し出すシャンパーニュづくりに着手した大手メゾンも登場。こうした潮流はまだそれほど目立つものではありませんが、先陣を切ったフィリポナやクリュッグなどの大御所に続く動きも確かに感じられます。

こうした一部の事例からも明らかなように、小規模ブドウ園とシャンパーニュメゾンはそれぞれのアイデンティティを守りながら、世界に名だたる「シャンパーニュ」産地のさらなる発展に向け力を合わせて取り組んでいるのです。

こごみ
こごみ
AOP ミュスカデ
AOP ミュスカデ