天候に恵まれない地域にもかかわらず、ジロンド県のぶどう畑で生産されるワインには、AB(有機認証)のロゴマークが徐々に増えてきています。なんて嬉しいニュースでしょう!
フランスではまだ少数派ですが、オーガニックワインの生産は定着しつつあります。2000年代初頭にはわずか1%だったオーガニックワインの生産面積の割合は、今日では約15%にまで増え、この数字は年々増加しています。かつては特定の地域だけがオーガニックワインの生産に取り組んでいましたが、今ではフランス全土のアペラシオンがこのトレンドに乗っています。
厳しいクリマ
保守的といわれるボルドーのぶどう畑に目を向けてみましょう。ここで、すべてのワイン生産地が同じ条件で有機栽培に取り組めるわけではないということを知っておいてほしい。「べと病」に代表される湿度を好む病害に悩まされる海洋性気候よりも、日照に恵まれた乾燥地帯の方が、明らかに有機栽培に適しています。というわけで、ミュスカデ(Muscadet)からボルドー(Bordelais)、イルレギー(Irouléguy)に至る大西洋沿岸のぶどう畑は、降雨量が多く、ぶどうの有機栽培にはやや不利と言えるでしょう。とはいえ、こうした地域のぶどう畑や醸造所も他の地域と同様、よりクリーンな生産方法を目指して前進しています。
あらゆるステージでオーガニック
他の地域と同様、80年代、90年代、2000年代初頭はボルドーのパイオニア時代にあたり、従来のぶどう栽培の「支配的モデル」に逆らう少数の前衛的な生産者が生まれました。ブルジェ(Bourgeais)のシャトー・ファルファ(Château Falfas)、フロンサック(Fronsac)のポール・バール(Paul Barre)、フラン・コート=ド=ボルドー(Francs Côtes-de-Bordeaux)のシャトー・ル・ピュイ(Château Le Puy)、そしてポムロールのシャトー・ゴンボード・ギヨ(Château Gombaude Guillot)などが一例です。多くの生産者がこうした動きに刺激されたのか、有機栽培がひと握りのワイン生産者だけのものだった時代は終わりを告げました。それどころか、ジロンド県では、あらゆる分野でその有機栽培がその地位を確立しつつあります。職人気質の小規模生産者が始めた有機栽培は、今や偉大なシャトーや格付けされたクリュにまで広がっています。その好例がメドック地区で、特にマルゴーではパルメ(Palmer)、デュルフォール・ヴィヴァン(Durfort Vivens)、フェリエール(Ferrière)といったシャトーが、クロ・デュ・ジョゲロン(Clos du Jaugueyron)やクロズリー・デ・ムーシ(Closeries des Moussis)といったより控えめな生産者が長い間歩んできた道を歩み始めています。
お金のため?
オーガニックワインは確かに売れていますし、ぶどう畑のオーナーもこの点に注目しています。しかし、生産者がぶどう畑をオーガニックに転換する際の深い思いを無視して、その動機を単なるお金儲けのためとして良いものでしょうか。多くの生産者はさらに一歩進んで、より厳格なビオディナミ農法にまで手を広げています。彼らのような生産者は、有機栽培は環境に良いだけでなく、ワインにとっても良い選択だと考えています。ボルドーがオーガニックに捧げる愛の大きさを感じられます。
Taste France Magazine オーガニック チョイス
Clos Puy Arnaud - Castillon-Côtes-de-Bordeaux - "Les Ormeaux" 2016
古くからビオディナミ農法を実践している生産者。派手さはないながら、生き生きとした口当たりの、スムーズでエレガントなワインに仕上がっています。
Clos du Jaugueyron - Haut-Médoc - 2017
オー・メドックとマルゴーのアペラシオンで、ブドウに忠実で、新鮮で、深みがあり、バランスの優れたワインを造っているミシェル・テロンのワイン。 まるでぶどう果実とテロワールを噛み締めているような味わいです。
Clos du Mounat - Côtes de Bourg - “Sans pour sens” 2018
酸化防止剤(亜硫酸塩)無添加、樽使用なし、ぶどう100%、メルロー100%、土着酵母100%…交じりっけないボルドー生まれのワインです。しなやかさと贅沢な果実味に加えて、ほのかにスパイシーでチョコレートのようなニュアンスも感じられます。
Château Le Puy - Francs Côtes-de-Bordeaux - "Emilien" 2018
ビオディナミ界隈では知られた存在のシャトーが送りだす、メルロー主体の赤ワイン。味わいは、うっとりするようなクリアで繊細な味わいで、赤い果実や下草のニュアンスが感じられます。若いうちから非常に優れたワインであると同時に、長期熟成にも適しています。