Provence: Life through rose-tinted glasses at the domaine de Barbebelle
取材

プロヴァンス~ドメーヌ・ド・バルブベルのロゼピンクの人生

Marie-Aline Prevost Marie-Aline Prevost, エディター 2022.01.19

エクス=アン=プロヴァンス近郊の小村ローニュでは、日常の言葉がラブソングに変わります。ロゼワインを花開かせようと努めるマドレーヌのことを考えると、頭の中にエディット・ピアフの歌が聴こえてきます。プロヴァンスで最も古いぶどう畑で、舌の上で完璧なメロディを奏でるあのピンクの液体を味わった私は、感動してしまったのです。

その色とニュアンス、軽やかさと深みをどう表現するか、繊細でありながら風味がないわけではないという特徴をどう強調し、無邪気な喜びをどう描くか、私は悩んでいました。プロヴァンスのロゼには、語るべきことがたくさんあるのだから。そんな私の思いは、「目的地に到着しました」というカーナビの声に遮られました。

「バルブベル」はペローの童話から抜け出てきたような場所。まるで逃避行への誘いのような旅先です。その名前(barbeはフランス語でひげ、belleは美しいという意味)からして、想像力をかきたてられる不思議な場所です。太陽が沈みはじめると、大地は深い眠りから目覚めたかのよう。木々は神秘的な道を描き、葉はささやき、そよぎ、影は伸びやかにくつろぎ、空中に光の粒子が舞い…。息を呑むような光景に、私は思わず目を見張りました。荘厳な一団が私の眼前に勢ぞろいしているのです。見渡すかぎり扇状に広がるぶどうの木々…活き活きとした緑の葉の下には、恥ずかしがり屋で野心たっぷりなぶどうの房が見え隠れしています。私の車の90馬力のエンジンが許す限り静かに、希望を湛えた枝々の方へと進んでみましょう。

Provence: Life through rose-tinted glasses at the domaine de Barbebelle
  • ©Cyril Entzmann Divergence

    500ヘクタールの広大な敷地

    中央に伸びる道の先には、立派なクルミの木が2本立っています。2つある噴水の一方を覗き込むと、オレンジ色の大きな生き物が棲息している様子。何かのまじないのせいに違いありません(後に鯉だと知る)。鎧戸を閉め、蔦の絡まる印象的な家が見えてくると、夢に向かって逃避行する若い女性が現れるのではないかと想像してしまいます。 「こんにちは、マドレーヌです」。振り向くと、象牙の塔からではなく、黒い4WD車から今回の取材相手が降り立ちました。ブロンドの髪に端正な顔立ち、海のような目をした彼女は、子供の頃に愛読した本の中のヒロインを思い出させます。でも、埃っぽいジーンズにニューバランスのスニーカーといういでたちのマドレーヌは、舞踏会から帰ってきたわけではないようです。 「朝5時に起きて、瓶詰めをしていたんです」。 バルブベルの敷地は300ヘクタールにも及び、そのうち50ヘクタールにぶどうの木が植えられています。マドレーヌは、幼い頃に亡くした母親からこの土地を受け継ぎました。父親に育てられた彼女は、ぶどうの木に囲まれて育ち、自分の道を自由に選ぶことができました。育った土地を離れ、得意とするビジネスを学んだ後、華やかなパリで何年か仕事をし、再びドメーヌに戻ることを決意します。

    Provence: Life through rose-tinted glasses at the domaine de Barbebelle
  • ©Cyril Entzmann Divergence

    シラーとグルナッシュ 

    私はピックアップの荷台にしがみつきながら、彼女の話に耳を傾けtました。私の頭の中には徐々におとぎ話が形作られていきます。幼少期、母親のいない子供時代、出発、冒険、そして最終的な帰還、さらにはヴァランタンと名乗る青い目をした青年との結婚。私の想像の中ではスムーズに物語が進行していますが、現実の私は、私を苦しめるためにあらわれたかのような意地悪な石たちに小突き上げられ、喘いでいます。「石灰質の土壌が、テロワールに個性を与えます」と説明するマドレーヌは、どんな揺れにも動じる様子を見せない。「今はぶどうの粒が実り始める頃。目を見張るわよ!」。私は幸運をかみしめました。「ここからの眺めが最高なのよ」と彼女が教えてくれて、車がようやく停まりました。その景色を前に、喉が渇いてくる、と言いたくなりましたが飲み込みました。

    Provence: Life through rose-tinted glasses at the domaine de Barbebelle
  • ©Cyril Entzmann Divergence

    セラーに向かう途中、マドレーヌがロゼの秘密について教えてくれます。マセレーションは行わず、ダイレクトにプレスすることで、果肉と果皮の間の移動を防ぐのだそうです。マストは36時間かけて清澄化され(デブルバージュ)、その間に粒子がタンクの底に沈みます。その後、10〜14日間かけて果汁を発酵させます。それから、ぶどう(今回はシラーとグルナッシュ)をブレンドして、キュヴェが生まれるのです。マドレーヌはドメーヌを引き継いだ際に、自分の名前を冠した1つのキュヴェだけを残して他のレンジを総替えしました。それまでのイチゴの香りが柑橘系に変わり、ラベルには髭に花が生えている意識高い系男性が描かれ、ワイン愛好家にやさしい眼差しを送っています。「今のトレンドに沿った、より若いパッケージングを目指したのです」。今日、ロゼはトレンディで、ファッショナブルで、クールな飲み物で、ニューヨーク・タイムズ紙によれば「リラックスへの誘い」なのです。マドレーヌの意識高い系ワインは、アメリカでトレンドになり、デンマーク、カナダ、ベルギーといった国々でも成功をおさめています。バルブベルでは生産量の60%が輸出されているそうです。

    Provence: Life through rose-tinted glasses at the domaine de Barbebelle
  • ©Cyril Entzmann Divergence

    ということは、私が楽しめるのは残りの40%。そういえば、 夕暮れ時、マドレーヌは彼女の魔法を味あわせてくれたっけ…。オレンジがかったピンク色で、やや深みがあり、デリケートな風味を持つ彼女のワインは、飲む人をくつろがせ、喜びでその心を満たし、プロヴァンスを祝福するかのようです。つまるところ、ピンクに染められたグラスで人生を味わっているのかもしれません。

    ショウガ
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    グアドループ産カソナード
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