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パイ料理

Jérôme Berger Jérôme Berger, ライター 2022.03.29
TFM_Cooking with pastry

フランスでは今日、レストランやケータリングのメニューに、ヴォル・オ・ヴァン(*1)、ハムクロワッサン(*3) 、パテ・アン・クルート、ビーフ・ウェリントン、サーモンのクリビヤックといったパイ生地を使った料理が目立つようになっています。これは伝統が再評価されていることを示す兆候のひとつ。時をへて、その美味しさが認められ続ける料理とは…

あらゆるソースと合う

2022年スタート早々、グルメファンが興奮するニュースが飛び込んできました。アラン・デュカスの後を継いでプラザ・アテネの総料理長に就任したジャン・アンベールによるガストロノミーレストランがリニューアルオープンしたのです!ファレル・ウィリアムスのパートナーでもある、40歳の青年シェフは何を提案してくれるのでしょう。それはどうやら、フランス料理の古典的なレパートリーや何世紀も前に作られたレシピを再解釈することのようです。彼の料理は驚きであふれています。例えば、美しく円形に焼き上げられたパイ生地が食べる直前にお皿の上にあしらわれる「ヴァル・オ・ヴァン」。目にも美味しいこの一皿は、SNSで拡散されました。
ジャン・アンベールだけではありません。ロンドンとパリで活躍するシリル・リニャックシェフは、フランスのテレビ番組に生出演し、年末のホリデーシーズンに向け「ピティヴィエ」の作り方を紹介し、雑誌の誌面では「ハムクロワッサン」の記事がトレンドとなり、パリ中心部に「V.G.E. スープ(*2)」を提供するスープ専門店がオープンしたことも記憶に新しいニュースです。パテ・アン・クルートのブームや、年々注目度が高まっているパテ・クルート世界選手権も同様に、伝統料理の復活の兆しです。

幸福感 

こうした伝統回帰の背景には、人々が安心を求めていることと確実に関係しています。不確実な時代だからこそ、確かな価値が求められるのです。それゆえ、食卓でも伝統的な料理が最上とされるのでしょう。
中世に起源を持つ「パテ・アン・クルート」、19世紀前半に生まれた「ヴォル・オ・ヴァン」、ポール・ボキューズが南仏で味わった昔ながらのレシピにヒントを得た「V.G.E.スープ」…これらはすべて、古くから愛されてきた料理であり、料理中に幸福感をもたらしてくれる料理でもあります。焼きたてパイのサクサクした表面、自家製パイから漂うかぐわしいバターの香り…。

小麦に関するトレンドも見逃せません。今、フランスでは古代小麦が人気で、それに伴い昔風のパンが流行しています。伝統的なパン戸棚からお皿へ、パンは潔く時代を越えました。明日のパン・菓子職人たちは、大きなパンからパイ、パテ、テリーヌ、ピティヴィエまで、あらゆる種類のパイ料理専門家として伝統を復活させようとしています。未来への美味しい回帰と言えるでしょう。

 

Taste France Magazine セレクション 

(*1) ヴォル・オ・ヴァン(vol-au-vent

円筒形のパイ生地の中に、鶏肉、リードヴォー(仔牛の胸腺)、マッシュルーム、トリュフ、ロブスターなどを詰めて、ソースを添えたフランス料理の記念碑的メニュー!

The vol-au-vent
  • ©Zoryanchik

    (*2)  V.G.E.スープ

    1975年、ポール・ボキューズがレジオン・ドヌール勲章を受章した際の午餐会で、ヴァレリー・ジスカール・デスタン大統領にふるまったもの。フォアグラとトリュフを効かせたチキンスープに、パイ生地をかぶせたもの。

    (*3) ハムクロワッサン

    その名のとおりパンととハムを使ったこのメニューは、フランスよりも海外で人気があったもの。コンテチーズ、レタス、ベシャメルソースといったトッピング具材と原材料の調達が容易なことから、フランスでも市民権を得ました。

    Cooking with pastry
  • Lauri Patterson

    レンコン
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    AOP カマンベール・ド・ノルマンディー
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