「フレンチビーフ」の美味しさを伝える一皿

By 江澤 香織

美食の国・フランスが渋谷を舞台に繰り広げる「渋谷フレンチフェスティバル(シブフレ)2023」が今年も9月30日(土)、10月1日(日)に開催されます。チーズ、ワイン、シャルキュトリーなど本場フランスの魅力的な食材が一堂に集まり、盛りだくさんに楽しめるイベント。その目玉の一つといえば、フレンチレストランシェフたちによる、「フレンチビーフ」を使った美味しい一皿です。今回は、フレンチビーフの紹介と共に、参加シェフの1人である「Restaurant L'EAU(ロー)」の清水崇充シェフに、フレンチビーフの魅力についてお話を伺いました。

 

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自然の中で牧草を食べて育つ牛たち。フレンチビーフってどんな肉?!

 

フランスはヨーロッパでも有数の畜産大国。飼育頭数は1900万頭といわれます。牛たちは、低地の牧草地やアルプスの草原など、環境に恵まれた多様に自然豊かな土地でのびのびと育てられています。フランスの肉牛は一般にグラスフェッド(※)と呼ばれる、夏は放牧で、冬は農場で収穫した干し草を食むというスタイルが登用されており、

この飼料の80%が牧草と干し草であり、その92%が飼育農場で生産されています。

ホルモン剤、成長促進抗生物質など人工的なものは一切使用されておらず、世界最高水準の厳格な健康基準で守られています。昔ながらの伝統を守る家族経営で、平均56頭ほどの小規模な農場が多く、各牛にはパスポートが発行され、牛の一頭一頭を、その生涯を通して同じ生産者が責任を持ち、手をかけて大切に育てています。

牛の選定、加工、輸送などには非常に専門的な高いテクノロジーで管理され、輸出に関しても完全なトレーサビリティを実現しています。また、他のどの国よりも肉用品種が多いのも大きな特徴です。代表的なシャロレー種、リムーザン種、ブロン・ダキテーヌ種などをはじめ、11種の高品質な肉用品種を飼育しており、消費者のあらゆるニーズに応えるよう、多種多様な製品を提供しています。

※グラスフェッド…畜産の飼育方法の一つで、牧草のみで育てられている。牛たちは広大な自然の中を自由に動くため、脂肪が少なく赤身の多い肉質になる。良質なタンパク質を多く摂取でき、低カロリーであることから、健康志向の方やスポーツ選手等にも注目されている。一方でグレインフェッドは穀物を飼料にし、牛舎で育てられることが多いため、脂肪の多い肉質になる。

フレンチビーフの最大の魅力、牛肉本来の美味しさを伝えたい

 

「渋谷フレンチフェスティバル(シブフレ)2023」にて、「Restaurant L'EAU」の清水崇充シェフが提供する一皿は、「フレンチビーフのステック・フリット」(写真はフレンチビーフのグリル、トリュフのソース、初秋のガルニチュールを添えて。)

程よい頃合いまでエイジングを施したシャロレー種の牛肩ロースに、炭火でじっくり焼き目を付け、最後にコンベクションオーブンでしっかりと焼き上げます。さっぱりした赤身肉ですが、肉質は柔らかく、ふかふかとした上品な噛み応えがあり、食べ進めるほどに食欲をそそる肉の自然な旨味と香りがじんわり口の中に広がって、体に染み渡るような滋味深い味わいです。

「和牛を食べ慣れている人は、牛といえば脂質の多い霜降り肉のイメージがあるかもしれませんが、自然の中で育てられた牛の本当の美味しさを味わえる、赤身肉の良さもぜひ知ってもらいたい。フレンチビーフはグラスフェッドで育てられているせいか、程よく引き締まった肉質で、肉本来の風味を楽しめつつ、優しく繊細な味わいがあり、体に負担が少ないことも魅力です」と清水シェフ。

清水シェフの実家は、東京・東長崎でおよそ40年続いた地元に愛される老舗のフランス料理店「Restaurant C'EST BIEN(レストランセビアン)」を営んでいました。2018年に惜しくもその幕を閉じましたが、清水シェフは小さい頃から料理人の父の背中を見て、自然と料理に興味を持ったといいます。銀座の「三笠会館」にて料理人としての研鑽を積み、その後は父と共にレストランセビアンで15年間シェフを務めました。

「子供の頃に食べて思い出に残っているのは、父の作るビーフシチューです。肉質が柔らかくて、牛の旨味があって、とても美味しかった。父も牛肉にはこだわりを持っていて、グラスフェッドの肉を使っていたと記憶しています」

清水シェフは2018年11月より、東京・外苑前に「Restaurant L’EAU」をオープンし、新たなステージでチャレンジを続けています。L’EAUとはフランス語で“水”を意味し、 “自然”への深い思いが込められたコンセプト。店内は石造りの壁に炭や流木をディスプレイし、椅子やテーブルも自然素材を使っています。

 

「水は生きる全てに関わる自然の根源です。人と水のように寄り添い、都会の真ん中で自然に癒されるような、そんな料理を提供したいと思っています」と清水シェフ。季節感を大切に、生産者の思いに真摯に向き合い、それを優しく食べ手へと伝えていくような、シェフの懐の深い温かな人柄が感じられる料理です。レストランは2022年、2023年連続で、「ゴ・エ・ミヨ」へ掲載され、清水シェフのこれからの活躍にも注目が集まっています。

 

また、清水シェフは日本サステイナブル・レストラン協会が主催する「Food Made Good Japan」会員に属しています。英国を発端に日本で設立された、サスティナビリティに配慮したフードシステムの構築を目指す団体であり、理事には、レフェルヴェソンスの生江史伸シェフ等が名を連ねています。

「自分はまだ学び中ですが、環境や人権など世界の問題を意識することの大切さを実感し、できる範囲で料理への配慮に務めています」とのこと。

 

最後に、フレンチビーフを家でも楽しむために、家庭での焼き方のコツを伺いました。

「一般的なステーキ用肉だったら、まずは片面をしっかり焼き色が付くまで焼き、ひっくり返したら、肉を押した時に耳たぶより少し硬いかな、というくらいまで焼いてみてください。それがミディアムくらいの状態です。あとはお好みの焼き加減に調整して」

 

グラスフェッドは最近ますます注目されており、フレンチビーフはこれから需要が高まっていくことが期待されています。自然な環境で育てられた牛の肉本来の味、赤身肉の持つ魅力をこれからも伝えていきたい、と清水シェフ。「渋谷フレンチフェスティバル(シブフレ)2023」でぜひ味わってみてください。

 

渋谷フレンチフェスティバル「ル・マルシェ ターブル・デ・シェフ」 9月30日 出演

《清水 崇充 シェフのメニュー》

  • ​​フレンチビーフのステークフリット…フランス産牛肉の噛み締める旨み
  • いばり仔豚のガランティーヌ…甘さと旨味のあるいばり仔豚をお召し上がりください
  • いちじくのタルト…サクサクの生地に濃厚なアーモンドクリーム、そしてジューシーないちじくをたっぷりのせた、
    秋のタルト

 

L‘EAU

〒107-0062

東京都港区南青山2-14-14 南青山KFKビルB1

電話番号: 03-5843-0140

営業時間:Lunch : 12:00〜15:00(L.O.13:00) | Dinner : 18:00〜22:00(L.O.19:30)

Contributor

Ezawa Kaori
江澤 香織

ライター、旅、食、クラフトなどを中心に執筆

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