フランスワインを自宅で熟成させるための手引き

By Vicki Denig

良いフランスワインを手に入れ、インターネットで調べて、そのワインについて少しだけ詳しくなる。そんな経験を誰もが一度はしているでしょう。しかし、すぐに避けられない問題が生じます。今飲むか、寝かせておくかを決めなければなりません。

A Guide To Aging French Wines At Home

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ワイン初心者にとっても、年季の入ったワイン愛好家にとっても、熟成させるべきワインを見極めるのは業界有数の難題です。しかし、実は皆さんが思っているほど難しくはありません!俗説とは異なり、セラーで寝かせるべきワインは、以下の5つの基準を考慮すれば分かります。 

手持ちのワインが長期熟成に耐えられるかどうかが知りたい方のために、参考になる情報をまとめました。以下の簡単なチェックリストに従って、今コルクを抜くべきか、それとも寝かせてから飲むべきかを見極めてください。 

 

Q:このワインは熟成させるべき?

 

A:すべてのワインに熟成が必要なわけではありません! 

これが最も重要なポイントです!99%のワインはすぐ飲むために造られていることをご存知ですか?実はそうなのです。市場に出回るワインの大多数は、ヴィンテージから5年以内に楽しむように造られています。長期熟成に耐えられるように造られたワインは、わずか1%に過ぎません。ここで既に答えが見つかったかもしれませんね。 

 

価格帯 

それでもまだ、熟成したほうが良さそうなワインがあるなら、まずは、その価格帯を考えてみましょう。品質や熟成能力を決める要素は価格だけではありません(12~25ポンドの価格帯にも美味しいワインはたくさんあります)。しかし価格帯が重要な意味を持っていることは確かです。 

まずは、品質の面から考えてみましょう。12ポンド以下で最高に美味しくてよくできたワインを見つけるのが難しいように、30ポンド以下で熟成に向いたワインはなかなか見つからないでしょう。もちろん例外はありますが、この価格帯のワインの多くは1~5年で味が良くなるものではありません。 

長期熟成に向いているかどうかは、ワインの価格設定のみならず、以下に列記した要素とも深い関係があります。ご心配なく。これから詳しくご説明します。

 

生産者の信頼性  

生産者の信頼性は大きな要素です。名酒がいつまでも名酒なのは、それなりの理由があるからです。コレクターのセラーに長期保管されているフランスの有名な産地や銘柄を思い浮かべてみてください。シャーヴ、コント・ラフォン、ボルドーの五大シャトーなど、例を挙げればきりがありません。このような銘柄が時の試練に耐えてきたのは、長年にわたって信頼性を証明してきたからです。多くのワイン愛好家がデュジャックやダンジェルヴィルのワインを好むのも、驚くにはあたりません。こうした一流の生産者は、セラーでの長期保存に耐える美味なワインの基準を常に満たしているからです。 

誤解しないでほしいのですが、新しい生産者はやめたほうがいいと言っているわけではありません。もちろん、新進気鋭のヴィニュロンやヴィニュロンヌ(造り手)の中には、長期熟成に適した上質なワインを造っている方もたくさんいます。とはいえ、知らない生産者について専門家の意見を求めることも、伝統のある銘柄にこだわることも、悪い考えではありません。 

 

ヴィンテージを読み解く

熟成向きのワインかどうかを見極めるには、生産者の信頼性と同様に、ヴィンテージも重要になります(注:ヴィンテージはいつも話題になりますが、早飲みタイプのワインの場合はそれほど重要ではありません)。ワインの熟成能力を知りたいなら、産地や収穫年について詳述したヴィンテージレポートをいくつかチェックしてみましょう。 

一流の銘柄が一流であり続ける理由と同様に、ヴィンテージレポートが昔からあらゆるセラー業者に重宝されてきたことにも理由があります。ヴィンテージレポートを作成する専門家は、数十年にわたってワインをテイスティングし、産地を訪れてきたエキスパートですから、ワインがこれからどう熟成していくかを見通すことができます。 

ヴィンテージレポートの執筆者は生産者とも深いつながりがあるため、その年の天候、ブドウの生育、セラーでの保存方法や熟成状況、過去のヴィンテージの熟成過程などの情報を直接得ることができます。

 

ストラクチャーを考慮する 

最後に、そのワインのストラクチャーを考慮します(生産者、インポーター、評論家の説明を読んだり、同じ銘柄をテイスティングしたりするとよいでしょう)。ワインのストラクチャーを評価するには、酸、タンニン、そしてトータルな味わいに着目する必要があります。酸はワインを酸化から守るため、酸味の強いワインは長期熟成に耐える傾向があります。酸味は、ワインをフレッシュでエネルギッシュな「生きた」状態に保つためのカギでもあります。

糖分もワインの天然保存料として機能します。そのため、ソーテルヌやアルザスのデザートワインは、セラーでの長期熟成に向いています。タンニンの強いワインも時間と共に進化していきます。若いうちはタンニンが渋くても、熟成するにつれてまろやかな味わいになります。 

最後に、酒精強化ワイン(発酵途中で蒸留酒を加えて造られるワイン。南仏のヴァン・ドゥー・ナチュレルを思い浮かべてください)も、セラーでの長期熟成に適しています。アルコール度数が高く、途中で添加する蒸留酒が天然保存料として機能するからです。 

 

横に寝かせて保管する

ボトルを横に寝かせて保管するのは、セラーの貯蔵容量を最大限に活用するためでもありますが、実はもっと大きな理由があります。ワインを長期熟成させる場合は、コルクを常に湿った状態に保つ必要があるため、ワインが常にコルク栓に触れているようにしなければなりません。常に湿った状態にしておくと、コルク栓が膨らみ、密閉性が高まります。こうして密閉しておけば、ワインの劣化を引き起こす酸素との不要な接触を防ぐことができます。要するに、寝かせて保管するのがベストなのです! 

 

暗所で保管する 

ワインを寝かせたら、暗い場所で保管することも重要です。ワインに空気が入らないようにするだけでなく、光も当たらないようにしましょう。(概して熱をもたらす)光もワインを酸化させるからです。ワインがあまりにも光に当たると、色合いが変化し、変色してしまうこともあります。 

湿度が重要 

最後のポイントとして、光を遮断するだけでなく、セラーの湿度を保つことも重要です。ワインを横に寝かせる理由と同様に、湿度の高い環境でボトルを保管すると、室内の湿気が保たれ、コルクも湿った状態を維持できるため、密閉性を確保できます。ワインのコルクが乾燥してもろくなると、酸素がボトルに入り込み、ワインのアロマや味わいがかなり損なわれるはずです。 

 

どこに保管するか

マンションに住んでいても、持ち家に住んでいても、自宅に最新式のワインセラーがあるとは限りません。でもご心配なく!間に合わせの「セラー」でも、十分に役割は果たせます。一戸建てにお住まいなら、ガレージがワインの保管場所に最適です。湿気が多くて暗く、比較的涼しいからです。都会のマンションにお住まいなら、温度調節可能なワインクーラーを購入するとよいでしょう。ワインクーラーは暗さや湿度も考慮した作りになっているため、自宅でワインを熟成させる上で必要な条件をもれなく満たしています。

 

ボトルを動かしちゃダメ? - 誤った通説に惑わされないで

ワインの熟成にまつわる通説には誤った情報が少なくないため、ここでしっかりと否定しておきたいと思います。よく聞く話の一つに、熟成中のワインボトルを「回転」させるべきだという通説があります。澱の蓄積を防ぐためには、ボトルを時々少しずつ回さなければならないというわけです。しかし実際は、ワインを長期間熟成させると、副産物として澱が生じがちです。ボトルを回転させても、沈殿物が瓶内を自由に動き続けるだけで、澱を落ち着かせることはできません。ボトルを回転させると、コルクを湿った状態に保てるという通説もありますが、実際は、ボトルを横に倒して保管するだけで、その役目は果たせます。ボトルを回転させても、ワインとコルクの接触が増えるわけではありません。

一方で、熟成中のワインはできるだけ移動させないほうがよいという考え方がありますが、この意見には大賛成です。ボトルを移動させたり、回転させたりすると、瓶内の澱が移動し、濁ってザラザラした状態になってしまうため、すぐに飲む予定がある場合は困ります。

最後に、多くの専門家は、年代物のワインを開けて楽しむ前には少し立てておくように勧めています。この意見にも全面的に賛成です。沈殿物をボトルの底に集めることができるからです。数日間立てておいてから開けるべきだという意見もありますが、数時間で十分だと思います。 

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