コート・ヴェルメイユの有名ドメーヌ「レ・クロ・ド・ポリーユ」

By Pierrick Jegu

「レ・クロ・ド・ポリーユ」はルシヨン地方の海沿いを代表するドメーヌです。コリウールとバニュルスに挟まれたこのアペラシオンを象徴するブドウ畑は、息を呑むような美しい風景と、非常に優れたワインを造り出しています。素晴らしい歓待が期待できる、魅力いっぱいの地域です。

Les Clos de Paulilles: one of the marvels of the Côte Vermeille!

注目のブドウ畑

ジュラ、サヴォア、アヴェロン地域と並んで、ルシヨンは近年のヴィンテージで注目される畑のひとつです。オーガニック・自然派に注目するワインショップやビストロでは、ルシヨンという仏最南端の地のワインがセレクションの中に入っていることでしょう。その背景として、1520年前より、土地価格が手頃なこともあって、才能とインスピレーションにあふれた若いワイン生産者が多く定住するようになった歴史があります。

けれど、彼らはゼロからブドウ畑を作ったわけではありません。昔からこの地方にもブドウの木があり、緩やかな丘の斜面や急な斜面に根を張ってきました。その山を段々畑に仕立てるために、何キロにもわたって石垣が築かれており、素晴らしいブドウ畑が生まれる下地は充分だったのです。

© ©LOUIS-LAURENT GRANDADAM

多種多様なワインを生み出す下地

このような歴史があるため、アペラシオン・コリウールは新しいものではありません。新しい畑からもや古くからある畑からも、テロワールの活力がみなぎる、ダイナミックな赤・白・ロゼワインが生産されています。有名な天然甘口ワイン、AOP(原産地呼称保護)バニュルスの産地もこの辺りです。AOPバニュルスには、赤・白の他に、とても珍しいアンブレ、ロゼ、トラディショナル、酒精強化のリマージュ、熟成ワインなど様々なタイプがあります。
コリウールとバニュルスという
2つのアペラシオンの生産地域はおおよそ重なっており、標高数百メートルに位置するブドウ畑は、海のすぐ近くの区画まで続いています。その中でも特に素晴らしいドメーヌが、今回ご紹介する「レ・クロ・ド・ポリーユ」です。

© ©LOUIS-LAURENT GRANDADAM

理想的なドメーヌとして

フランスの最も美しいワインドメーヌを決めるコンテストがあるとしたら、「レ・クロ・ド・ポリーユ」には出場資格が充分にあるでしょう。

心をぜひ美しい風景の中に飛ばしてみてください。湾や岬、入り江で飾られた海岸線、地中海に消え入るように柔らかな傾斜を描く山々、海と砂浜の極近くまでブドウの木々が茂っている光景は夢のようです。アルジュレスからスペイン国境まで続くコート・ヴェルメイユの中でも、コリウールとバニュルスの間にあるポリーユの入り江は最も魅力的な一角でしょう。絵葉書のような風景の「レ・クロ・ド・ポリーユ」ですが、綺麗なだけではありません。この地方を象徴する正真正銘のワインドメーヌなのです。

改めて、1800年にベルナルディ家によって造られたドメーヌ「レ・クロ・ド・ポリーユ」をご紹介します。このドメーヌは、ルシヨン地方の内陸部にあるアグリ渓谷にて巨大なドメーヌを経営するカーズ家により、2012年に買収されました。元々、カーズ家は約200ヘクタールを有していましたが、さらにこのドメーヌが新しく加わった形です。

「レ・クロ・ド・ポリーユ」には、未開墾地と低木林からなる約20ヘクタールと、この地方特有のシスト土壌に根ざすブドウの木が育つ約70ヘクタールを含む、計約90ヘクタールの土地が広がっています。雨がほとんど降らないため、畑は太陽の強い光にさらされ、涼しく湿気を含む海風や、激しく乾燥した熱い風、トラモンターヌが吹きつけます。

美しくも厳しい環境、ここではそれが相反することなく成立しています。

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テロワールとブドウの声を聴いてみませんか?

このドメーヌのブドウ栽培においては、数年前から、環境と生物多様性の維持を重視する方向性が明確に打ち出されています。実際に、生垣や木立、有名な石垣の維持管理方法を見ればそれがわかります。

さらに「レ・クロ・ド・ポリーユ」では、グルナッシュ、シラー、ムルヴェードル、カリニャンを含む5種類のブドウ品種と、独特の日照条件と地質を持つそれぞれのミクロテロワールを最大限に活かす方針、そして適切な時期に収穫することを何よりも大切にしています。

ブドウの収穫は数週間にわたり、収穫された果実は古式で美しいセラーまで運ばれます。建物は壮大で、コンクリートタンク、樽、アンフォラなど、あらゆる種類の器が収容されています。

ここでヴィニフィケーション(発酵)させる理由は何でしょうか? それはテロワール(生育環境)とブドウそのものを最大限に尊重し、地球温暖化により失われかねない自然のバランスを南国気質のワインに取り入れることです。

自然派甘口ワイン中心のコリウールとバニュルスのアぺラシオンにおいて、「レ・クロ・ド・ポリーユ」はそれだけでなく幅広いバラエティを提供しています。果実味のある辛口のロゼ、ミネラル感のある白、力強く貪欲な赤、抑制の利いたバニュルス…。どうしたらこれらを味わえるのでしょうか? とっても簡単です。

試飲できるセラーに直接行くか、ビーチから数歩というレストランの美しいテラスでこの味を楽しめます。

レ・クロ・ド・ポリーユ」は、地場ワインを楽しむための最高の場所と言えるでしょう。

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Taste France Magazine 「レ・クロ・ド・ポリーユ」ワインセレクション

AOP コリウール - Cap Béar 白 - 2021

バランスのとても良い1本。フレッシュかつ深みがあり、豊かな味わい。後味からはミネラルを感じられる。

香りは、ヨード香、白い果肉、地中海の低木林など、驚くほど複雑。
地中海の魚介や、シーフードリゾットと一緒にどうぞ。

AOP コリウール - ロゼ 2021

フレッシュでとても心地よいこのロゼは、赤い果実と柑橘類の香りを醸し出しています。
アペリティフ(食前酒)としても、夏のサラダ、子羊のグリルにもよく合います。

AOP コリウール - 赤 2020

熟した果実とスパイスの香り。シラー、ムールヴェードル、グルナッシュをブレンドしたこのキュヴェからは、地中海沿岸ならではの個性を顕著に感じられます。おおらかで雄弁、繊細さと気品を併せ持つ1本です。
ソースを添えた肉料理や、グリル料理と一緒にお楽しみいただけます。

AOP バニュルス グラン・クリュ - 2015

この自然派甘口ワインには、カカオ、ブラックフルーツ、その他スパイシーでバニラを感じさせるアロマが漂い、複雑で、ボリュームと余韻を秘めています。
チョコレートや赤い果実のデザートと合わせるのに理想的なワインです。

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