ジロンド県のブドウ畑は伝統にとらわれることなく、変わり続けています。数年来、持続可能で「徳の高い生産方法の発展と、将来性のある「小規模な AOCワインの存在がブドウ畑に活気を与えています。AOC カスティヨン・コート・ド・ボルドーのエリアから、シャトー・ブランドーの例を見てみましょう。

Château Brandeau - Castillon-Côtes-de-Bordeaux

一般的な誤解

これから、もしかしたら皆さんが誤解されているかもしれない事柄について説明します。第一に、メドックやサン=テミリオンといえば思い浮かぶ有名シャトーは、ボルドーにおいて実は例外であること。ボルドーを代表する魅力的な存在ではあるものの、その生産量は全体の約1パーセントにすぎません。第二に、天文学的な価格がつけられる、まるでダイアモンドのようなワインとは対照的に、ボルドーの何千もの作り手が手掛けるワインのフランスでの市場価格は5ユーロから25ユーロであり、第三に、ボルドーでは、ますます多くのワイン生産者がオーガニックや自然派のアプローチをとっています。
以上のことから、一般的なイメージと違い、ボルドーとは名門シャトーやグラン・クリュ、非常に高価なワイン、伝統的なブドウ栽培だけではないことがわかります。

© ©LOUIS-LAURENT GRANDADAM

AOC カスティヨン・コート・ド・ボルドー

その一番わかりやすい例が、ジロンド川の右岸、AOC カスティヨン・コート・ド・ボルドーのエリアです。マルゴー、ポムロール、ソーテルヌほどの名声はありませんが、数年前から、ダイナミックでエキサイティングなワインが生み出されています。サン=テミリオンに隣接するこのエリアのブドウ畑は大部分が南向きで、ドルドーニュ川流域は砂利質、丘陵の麓地帯は粘土質、高台は泥灰~石灰質という、主に3種類の優れたテロワールで構成されています。
近年、ティエリー・ヴァレットに代表される有機栽培やビオディナミ農法の先駆者に触発された多くの若い生産者が、その精神を引き継いでこの土地に移住してきました。その結果、今日ではこの地域のほぼ25%で有機もしくはビオディナミ農法が採用されています。これはフランスの全国平均をはるかに上回る数字です。

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シャトー・ブランドーの場合 

レ・サル=ド=カスティヨンのブドウ畑は丘陵地だけではなく、森、湿地、さらには牧草地にも広がります。ジュリアン・フォーフトはこの土地に馴染んでいますが、地元の人ではありません。ベルギー出身で飲食店経営者の親を持つ彼は、モロッコ、ニュージーランド、ケベックでワイン生産の経験があり、独立前はこのエリアのほかの生産者のもとで働いていました。
大きなブドウ畑の相続人でも、金持ちの投資家でもない、ただのワイン生産者であるジュリアンにとって、有機栽培は当然のアプローチであり、ビオディナミ農法も取り入れ、馬を使って畑を耕すこともあります。彼が目指すワインは、技術にたよった媚びたワインとは対極にある、何よりもテロワールと果実味を反映した飲みやすいワインです。「バンザイ」「ガス・ガス」「ジュー・フラン・ジュ」といったワイン名やラベルのデザインは、ボルドーの古典的なスタイルから抜け出しており、それは価格においても同様です(フランス国内で購入する場合、最も高価なもので15ユーロ)。
要するに、ジュリアン・フォーフトと彼のワインは、ボルドー地域において、低価格帯で自然派の、活力に満ちた、非常に良いAOCワインの生産が可能だということを証明しているのです。そういう生産者は彼だけではありません!間違いなくジロンド県のブドウ栽培は進化し、批判する者たちの主張が間違っていることを示し始めているのです。これからもボルドーから目が離せません。

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Taste France Magazine’s selection 

シャトー・ブランドー カスティヨン・コート・ド・ボルドー「バンザイ」2020年
メルローは時に強さ、完熟味、甘みが少し強くなりすぎることがありますが、このワインは違います。なめらかで非常にフレッシュで、大げさな味はなくとも、フルーティーで喜びにあふれ、その使命を完璧に果たしてくれます。

シャトー・ブランドー カスティヨン・コート・ド・ボルドー 2019年
ジュリアン・フォーフトはこのワインで離れ業をやってのけました。伝統的なボルドーワインの「真面目さ」に向き合いつつ、自然派ワインを望む声に応えたのです。友人たちとの食前酒の延長や、日曜の家族の食事に最適です。

シャトー・ブランドー カスティヨン・コート・ド・ボルドー 「フラン・ジュ」2021年
アンフォラ(素焼きの壺)で熟成されたカベルネ・フラン種のこのワインは、ストレートな味わいで、飲みやすさとはじける果実味、すばらしい舌触り、そして塩っけのある魅力的な後味が特徴です。

 

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