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フランスの都市にひびく蜂の羽音

Jill Cousin Jill Cousin , Editor 2022.06.09
Green lines: French cities are buzzing...

フランスではプロ・アマチュアにかかわらず、養蜂家が増えています。それも何と都市部で!もちろん彼らは都市部に蜂の巣箱を設置しています。貴重な花粉媒介者であるミツバチは道端や周辺の畑の花から採餌するため、その土地の恵みが集約された蜂蜜の生産が可能になっているのです。

私が養蜂場に着くと、巣箱の間をいそがしく動き回るジェイミー・ロゾフの姿がありました。アメリカのフィラデルフィア出身で、軽いアクセントのある彼女の声が耳元に響きます。彼女の人生が180度変わっったのは、高校の遠足で地元の養蜂場を見学したのがきっかけ。遠足から帰ると、ジェイミーは高校に蜂の巣箱を設置して、養蜂クラブを立ち上げます。次に影響を受けたのがフランス映画『アメリ』。彼女はフランスにのぼせあがり、高校卒業後、セヴェンヌの養蜂家夫婦の元にたどり着きます。
その後マルセイユに引っ越してきて、現在30あまりの巣箱をマルセイユ南東部にある農地の共同区画と自分の庭に設置するまでになりました。都市部から養蜂が完全に消えたことはありませんでしたが、2000年代半ばから急速にその数を戻しました。今では、主要な都市中心部のほとんどに巣箱が設置されています。2019年の農業・食料省の調査によれば、パリには284の養蜂家が管理する2631の巣箱が設置されていますが、2010年にはその数はたったの200から300だったのです(※)。一般的な印象に反して、フランスでは都市部の養蜂場の生産性と品質は地方のものにまったく劣らず、パリの蜂蜜はリンゴの木、クローバー、シナノキ、ツタなど、実に多様な植物からできています。

このブームをどう説明すればいいのでしょうか?2017年、フランスの日刊紙ル・モンドに掲載された記事によると、ヨーロッパでミツバチが絶滅の危機にあると報告されています。化学的な殺虫剤の大量使用および都市化の進行が、ミツバチの生息環境を徐々に侵食しているのが主な原因です。受粉は果物や穀物など、人間の食糧生産の約50%に必要なものだというのに。
いくつかの見識の高い都市が、建物の屋根や公共の庭園に巣箱を設置しようと考えたのは驚くことではありません。そのうえ田舎よりも殺虫剤の使用がずっと少ない都市部は、ミツバチの個体群の健康に好ましい条件を備えているのです。この考えに基づいて、パリ市は2001年から緑地での殺虫剤の使用を削減し、2007年までに公園、庭園、墓地における“殺虫剤ゼロ”を目指す方針を採用しています。国もこれに影響され、2017年1月1日からラベ法が施行されることになりました。地方自治体、公共機関および国は、公用地・私有地にかかわらず、一般に解放されているか、もしくは人々がアクセス可能な緑地、森林、遊歩道等の手入れに殺虫剤が使えず、また、使用の指示を出すこともできなくなりました。
フランスの措置は特殊かもしれませんが、これはミツバチの生育環境への世界的な懸案に対する具体的な行動の良い例と言えるでしょう。ニューヨーク、トロント、ロンドンでも、それぞれの土地に生息する何百万もの花粉媒介者がミツバチと共に羽音を立てています。ミツバチと都市住民との共生の例はこんなにも数が多いのです。

※出典:パリ高等師範学校による研究報告書

セロリ(根の部分)
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AOP ニヨンス産ブラックオリーブ
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