米は世界で最も多く消費される食料の一つですが、フランスでの普及は比較的遅く、現在、「メイド・イン・フランス」の米を生産するのはカマルグ地方のみです。

昨年の夏、筆者はアルルを訪れ、たちまちこの街に魅了されました。古代から続くこの街は、色鮮やかで活気があり、人々も親切な美しいところです。アルルといえば、美術、ファッション、そして写真の街です。古い城壁の向こう側には、はつらつとした、人生を謳歌する街があります。美しい路地には、つい覗いてみたくなるような小さな店が立ち並び、甘いパティスリー、ラベンダーと陽光の香りが漂い、あちらこちらから音楽の音色が聞こえてきます。そして、街から出ると広がっているのが、世界的に有名なカマルグの水田です。
カマルグ風パエリア - パエリアがアルル名物になった理由とは
アルルの中心地であるフォーラム広場は、有名な史跡である円形劇場からほど近いところにあります。この広場にはたくさんのレストランが立ち並び、その中にはオランダの画家ゴッホの有名な作品「夜のカフェテラス」(1888年)のモデルとなったヴァン・ゴッホ・カフェもあります。 そのすぐ向かいにあるエレガントで洗練されたグラン・ホテル・ノール・ピニュは、いつの時代もこの街の社交場となってきました。このホテルには勇敢な闘牛士や誇り高いフラメンコダンサーが逗留していました。壁には、かつて闘牛が盛んに行われていたことを物語る古いポスターが飾られています。アルルは、フランス上流社会の夏の別荘地でもあり、マリア・カラスやピカソ、ジャン・コクトーなどの芸術家が華やかな交流を繰り広げていました。
夏の終わりから秋にかけて、サフランの花、ニンニク、ローストチキンの香りが街の広場や路地に漂います。いたるところの店先にパエリア鍋が置かれ、パエリアが作られています。鮮やかな赤いエビ、出汁をたっぷり吸って黄色に染まった米の中で、ムール貝が静かに開いていきます。
「あれ、おかしいな。パエリアはスペインの名物料理ではないか?」と思われる向きもあるでしょう。確かに、スペインの国境から近い場所ですが、カマルグは欧州で最も歴史ある米生産地の一つです。ここでは16世紀から米が栽培されています。そして、19世紀以降は最高品質の米作りが行われています。 カマルグ風パエリアは、スペインのものよりもクリーミーで出汁がたっぷりです。お焦げはなく、むしろ良くできたリゾットのような食感。でも、リゾットのようにチーズは入っておらず、サフランで香り付けしてあり、とても美味しいのです!主役は、ナッツのような香りを持つカマルグ産の米で、そこに柔らかな鶏肉としっかりとした肉質のエビが加わります。


カマルグのデルタ地帯 - 躍動感ある自然美
アルルから車でほんの30分のところに、カマルグ自然公園の心臓部があり、それに隣接して複数の塩湖があります(なお、アルル市は乗り入れ規制が徹底されているため、市内ではあまり車を見かけません)。米と塩はカマルグ地方の名産品であり、ローヌ川から地中海へと広がるこの自然の景観は感動的です。アシや稲が風にサラサラと吹かれ、黒い雄牛が広大な緑の草原で草を食み、有名なピンクのフラミンゴが砂州や水面にあらわれた塩田に群れを成して立っています。このピンクのフラミンゴ(ヨーロッパフラミンゴ)はカマルグに生息するとされる340種類の動物の一つで、他にも9種のヨーロッパサギが定期的に飛来します。この公園は、広さ1万3,000ヘクタールの自然保護区となっており、カマルグの白馬(乗馬もできます!)を見ることもできます。園内には自然散策路や観察デッキ、展示施設、カマルグ博物館や米博物館(Maison du Riz)があり、カマルグについて知ることができます。
カマルグ米 - 品質と多様性
ここには有名な水田が地平線まで広がっています。現在、フランスの米生産量の75%がカマルグ産で、うち55%はアルル地区で生産されたものです。カマルグ地方は晴天の日が多く、気温が安定しており、ローヌ川と地中海の間のデルタ地帯を吹き抜ける北風(ミストラル)と相まって、米作りに最適な地域となっています。ミストラルは、稲を乾燥させ、害虫から米を守ってくれます。現在、白米、黒米、赤米の3種類の品種が栽培されています。カマルグ産赤米は自然変異によって生まれ、現在では世界的に有名になっています。2000年には地理的表示保護(IGP)の認定を受けました。


太陽、風、水 - カマルグ米の栽培方法
現在のような高品質のカマルグ米が出回るようになったのは、第二次世界大戦後以降です。戦争やフランスの植民地であったインドシナ独立運動により米の輸入が止まったことで、古くから穀物が生産されていたカマルグ・デルタ地帯への関心が高まりました。1945年以降、マーシャル・プランの一環として、灌漑システムとポンプ場が建設されました。その後15年間で、カマルグ地方は欧州有数の米生産地域となりました。
現在も、米作りに最適な気候条件を活かした栽培が続けられています。稲の生育には何よりも温暖な気候が必要です。根を水に浸し、風通しの良い環境で栽培します。種まきは4月中旬に行われます。農家はその数日前から、ローヌ川の水を水田に引き入れ、太陽の熱で発芽に適した水温(15~17℃)になるよう温めます。4週間後、少しずつ水を抜いていくと、浮いた状態の稲が根を張るようになります。その後、田んぼに再び水を張り、8月後半には稲の花が咲きます。稲の成長には130~150日かかり、収穫後は脱穀して販売されます。茶色い玄米は特に高い栄養価を誇る、エネルギーの宝庫です。とはいえ玄米でなくても、各品種は、マグネシウムやカリウム、鉄、亜鉛などのミネラルやビタミンB1など、重要な栄養素を豊富に含む、スーパーフードの資質を有しています。免疫力を高め、心臓や神経の機能をサポートし、筋肉のけいれんを防ぐよう働きかけます。

カマルグ米の購入と調理
カマルグ米はナッツのような香ばしい風味で、人気のあるお米です。調理に必要なのは、少量のバターと塩だけです!肉や魚介類の付け合わせにぴったりで、特にカマルグの「ガルディアン・ド・トロ(雄牛のカウボーイ風煮込み)」という名物料理に合わせると絶品です。この料理は、肉を良質の赤ワインで煮込み、ローリエ、タイム、オレンジピール、ビネガー、玉ネギ、ニンニクで風味付けします。
カマルグ米はオーガニック専門店や健康食品店など、品揃えの豊富な食品小売店、またはオンラインショップで購入することができます。カマルグ地方にいらっしゃるなら、スーツケースのスペース(重量も)を確保し、ぜひスーパーフードであるカマルグ米を数袋買って行ってください。現地で買う方が大幅に安いですし、いろいろな品種を購入することができます。テイストフランスで、カマルグ米の調理方法やコツをご覧ください!
アルルに行きたくなってしまいましたか?それでは、カマルグ米のバイヨンヌ産生ハム巻きを食べながら、旅行プランを練ってください。
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