あるパリジャンの教授がニューヨーク・タイムズのインタビューの中でこう言いました。「フランスにバターがないと考えるとゾッとします。」

フランスでは、バターは必需品とされ、「フランス料理の秘訣は、一にバター、二にバター、三四がなくて五にバター!」と半ば冗談で言う人もいます。繊細で滑らかなフランス産バターは世界最高と評価され、パンに塗るだけで至福の体験をもたらします。
フランス産バターは口に入ると繊細な香りがして、その後少しずつ舌の上で上品に広がっていきます。製造過程で発酵を加える発酵バターでは、さらに洗練され、調和のとれた風味となり、揚げ物や焼き物などの料理を格上げしてくれます。 しかし、フランス産バターは何もミシュランの星付きフレンチレストランの専売特許ではありません。アジア料理でもその魔法を発揮してくれます!
フランス人がバターにこだわる理由とは? - そのさまざまな用途
バターは、フライパンの焦げ付きを防ぐため以外に、実にさまざまな用途があります。バターはフレンチソースの鍵となる食材であり、例えばバターと卵の黄身を材料とするオランデーズソースなどがあります。このクリーミーなソースをエッグベネディクトやホワイトアスパラガスに垂らせば、間違いなく最後の一滴までなめ尽くしてしまうでしょう。 焼き菓子では、バターは生地の水分を保持し、焼いた時にも膨らみやすくなります。 料理で使う油脂の中でおそらく最も人気のあるバター。あらゆる種類の料理でさまざまな役割を果たしてくれます。
柔らかく、ふわふわした食感
パイ生地はバターの塊を生地で包み、何層にも折り重ねることにより、焼くとサクサクする多層構造が生まれます。パイ生地に滑らかでクリーミーな味わいを与えるのはバターです。フランスのクロワッサンやクイニーアマン、世界中で「デニッシュ」と呼ばれるデンマークのペストリーをはじめ、バターがヨーロッパのスイーツの基本食材となっているのは、こうした理由によります。バターは小麦粉に含まれるタンパク質(グルテン)を弱める役割も果たし、柔らかなペストリーを作ることができます。
乳化させて作るソース
乳化とは、油と水など本来は混ざり合わない2種類の液体を、「乳化物」という別の材料の助けを借りて混ぜ合わせて、滑らかで光沢のある液体の状態とすることです。この原理はさまざまなソースの製法に活用されており、バターは優れた乳化物となります。 米国の著名なシェフでテレビ番組でも活躍したジュリア・チャイルドは、ソースはフランス料理の肝心要であり、バターはまさにそのソースのための感謝すべき食材であると言っていました。
バターがもたらす深い味わい!
バターはその香り自体がたまらなく魅惑的で、香味料として使っただけでも、大人気となっていたでしょう。 例えば、偉大なシェフ、故ジョエル・ロブション氏の代表的料理であるジャガイモのピュレは、ジャガイモ、バター、牛乳、塩の四つの材料しか使っていませんが、その驚くべき味わいの秘密は、まさにその驚くべきバター使用量。普通シェフがマッシュポテトを作るときは、ジャガイモ1キロに対し、バター50~100グラムを加えます。しかし、ロブションのレシピでは250グラムものバターを使っているのです!
バターはその汎用性により、フランス料理の根幹となっています。そのレシピでは、さまざまな形態のバターが使用されています。最も多いのは、クロワッサンなどのサクサクしたパイ状のペストリーやタルトなどに使われる「冷やしたバター」です。 さらにフランス料理では、バターを加熱して「焦がしバター(ブール・ノワゼット)」や澄ましバターを作ることも多く、料理にさまざまな味わいや食感を加えています。
焦がしバターは、バターをゆっくり熱して、乳固形分が鍋底に沈み、褐色に色づくまで焦がしたものです。このタイプのバターは、温かく、ヘーゼルナッツやアーモンドを思わせるナッツの香りがあります。その多層的な風味で、焼き菓子やソースに使われることが多いのですが、ホタテのソテーにもよく合います。
澄ましバター(上澄みバターとも呼ばれる)は、水分が蒸発してなくなるまで加熱したバターです。澄ましバターは発煙点が高いため焦げにくく、高温で短時間揚げる調理に適しています。
バターは西洋料理での伝統的な用途だけでなく、中国料理に取り入れることもできます。
中華鍋レシピにも
澄ましバターはあらゆる種類の揚げ物に使えます。植物油よりもまろやかな味わいであるため、特に中国料理では炒め物や目玉焼き、豚肉の唐揚げ(赤身肉と特に好相性)にぴったりです。また、植物油の代わりに冷たいバターを鍋に引くこともできます。
フレーバーバター
フレーバーバターはとても簡単に作ることができ、さまざまな用途に使えます。冷たいバターを常温に戻し、塩と好みの調味料を混ぜるだけで完成!例えば、パセリとレモンの皮を混ぜてグリル肉の風味付けに使ったり、キムチと塩漬け卵黄を混ぜるだけで、料理がアジア風になります。
バター醤油
TVドラマ「深夜食堂」では、バターと醤油の組み合わせが意外な美味しさを生む、「バターライス」というシンプルな日本料理が登場しました。 醤油の塩味がバターの滑らかと調和し、ほんのり甘さの残るマイルドな味わいで、普通の白米が別次元の料理に昇華しています。醤油が味覚を刺激し、バターは空腹を満たし、白米はほっとするような馴染み深い感覚をもたらします。シンプルな料理を食べるといつも、最も深い哲学的疑問が湧いてきます:どうしてこれほど美味しいのか?
世界的に有名なシェフも、東洋と西洋の味の融合を提案しています。
シェフのジャン・ジョルジュ・フォンゲリヒテン氏は2000年に出版したレシピ本(Simple to Spectacular)で、すでに肉をバターで焼き、醤油と生姜で風味付けするレシピを考案しており、これが永遠の一皿となると考えています。 ウルフギャング・パックが考案したケータリングメニューでは、牛肉のサテ(串焼き)が前菜となっています。ここでも、バター醤油が風味の鍵となっています。 バター醤油の最も良いところは、量や味付けについて厳格なルールのない点です。毎回とても美味しくなるのです。今度ぜひ作ってみてください!
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