本場の空気を彷彿させ、シェフの技術と感性が光る、ナチュラルなフランス菓子
学芸大学の駅から大通りをまっすぐ歩いて約5分。淡いスモーキーグレーのスタイリッシュな外観と、お菓子の焼ける香ばしい匂いに誘われて、吸い込まれるように扉を開けると、目の前にはずらりと並ぶたくさんのヴィエノワズリー。クグロフ、ブリオッシュ、カヌレ、クイニーアマンなど、フランス各地の代表的な郷土菓子が勢ぞろいしており、心踊らずにはいられません。そして隣にはガラスのショーケースの中にまばゆいばかりの美しくおいしそうなケーキがお行儀よく並び、思わず笑みがこぼれ、ワクワクした気分が高まります。オープンと同時に途絶えることなく続々とお客さんが訪れ、店内はいつも賑やかです。
「Taisuke Endo」のシェフ・遠藤泰介さんは、パティシエ界の巨匠ピエール・エルメのイクスピアリ店にてスーシェフを務めた後、ザ・ペニンシュラ東京でさらに腕を磨き、2018年には「パティスリーカメリア銀座」のシェフパティシエに就任。国内外のコンクールでも多数の賞を受賞し、各種メディアに登場するなど幅広い活躍をされています。2022年よりフランスへ渡り、アルザスのパティスリーカムに従事。四季を通じて現地で生活し、働いたことで、フランスの伝統文化をより深く肌で感じることができたそうです。
「パリではなく、アルザスに滞在したことも良かったと思っています。その土地らしいリアルな暮らしを体感できましたし、本物の郷土菓子に数多く出合うことができました。自分の住んでいたところはキッチンにオーブンもあったので、仕事から帰ってきてから自宅でも地元のお菓子を色々作り、近所のレストランの人達に食べてもらったりして交流していました。そういう現地で得た経験は今の店にも大いに役立っています」
また30代半ばという仕事に関して脂の乗った年代に渡仏した事で、技術習得だけではない、若い頃だったら分からなかった広い視野でのパティスリーの在り方などを改めて考える、多くの刺激と自信を得たそうです。帰国後、2024年7月に満を持して「Taisuke Endo」がオープンしました。
「Taisuke Endo」のお菓子は、きれいに整った目に麗しい手仕事の繊細な美しさと同時に、おいしいものをいっぱい食べて楽しんでね、という人間味を感じさせる素朴で大らかな温かさがあります。例えば「フランヴァニーユ」。フランといえばフランス人が大好きなクラシック菓子ですが、あれ?と思うくらい結構なボリューム感(と言ってもペロリと食べられてしまいますが)。フランスでよく見た本来のサイズ感を再現しています。
またパリブレストという伝統菓子にちなんで作った「パリ-トウキョウ」には上質なピーナッツの自家製プラリネがたっぷり入っており、フランスと日本のご縁を繋ぐ、というシェフの想いが込められています。そして「マリーアントワネット」はシェフのスペシャリテで優しいピンク色の夢のようなケーキ。バラの優雅な風味とピスタチオの上品な香ばしさ、ピンクグレープフルーツの甘酸っぱさが絶妙なバランスで、味と香りの豊かさに酔いしれます。できるだけ自然の素材を使い、素材が持つ本来の香りや味わいを生かしたお菓子づくりを心がけているそうです。イートインスペースがあるので、コーヒーや紅茶と一緒にいただくこともできます。週末には朝食メニューもあり、フランスのカフェのような雰囲気で、クロックムッシューやクロワッサンサンドが食べられます。
フランスで暮らすまでは、フランス菓子の概念を自分は本当に理解しているのか、と常にどこか気を張っていたという遠藤さんですが、今は肩の力が抜け、フランス菓子のテクニックを上手に使いながら、シンプルに自分らしくおいしいお菓子をつくればいい、という境地に達したそう。いつかはフランスでも店をやりたいという目標を持っており、また一緒に働くスタッフが気持ちよく仕事ができるよう労働環境を整えることにも力を入れています。これからますますの活躍が期待される遠藤さん。魅力溢れるフランスの文化を味わいに、ぜひお店を訪ねてみてください。
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