ソーシャル・ディスタンシングの時代、変化を迎えるアペリティフ

By Lindsey Tramuta

フランスでは、1日の終わりが意味するものは、ただひとつ。それは「l’heure de l’apéritif(ルール・ドゥ・ラペリティフ)」、すなわち、食前酒を飲む伝統です。この伝統は何世代にもわたってフランス文化の柱として存続してきました。しかし、COVID-19によって人々は外出できなくなり、いつもみんなが集まる場所は固く閉ざされている状況で、アペリティフも時代に合ったものになる必要があります

Aperitif Social Distancing

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アペリティフは、昼から夜へと移る嬉しい時間の日々の習慣として愛されています。アペリティフという言葉自体はラテン語のaperire、すなわち「開く」に由来し、通常は友人や家族の間で、「食欲」と「夜」が高まっていくことを表します。ただ、もっとも重要なことは、場所が近所のカフェのテラスだろうと、友人宅の居心地のよい内輪の空間だろうと働いた後のこの癒しの時間がフランス人の社会的つながりにとって不可欠であるということです。しかし、COVID-19によって人々は外出できなくなり、いつもみんなが集まる場所は固く閉ざされている状況で、アペリティフも変わらなければならなくなりましたフランス人が毎日のアペリティフをどのように変えてきたかについて、以下でご紹介します!

 

バーチャル・ギャザリング

バーで友人と肘同士がぶつかるぐらい近くに座ることの次に良い方法は?

画面上で友人たちの顔をみながら毎晩「アペロ(食前酒)」を飲む集いを、ZoomSkypeHousepartyGoogle HangoutFaceTimeでセットアップ。さらに、定例チャットを開催すれば、深夜にまでずれ込みがちな在宅勤務を強制的に切り上げることができます。コツはすべて簡単にすませること。たとえば、さっと作れる、ストレスフリーな、ほっとするドリンクを飲みながら、気分が上がるような軽い会話やゲームをひとつ、ふたつやってみる、など。人によっては、つめたく冷やしたラガーや、クラシックなマティーニをアレンジした「Quarantini」(クアランティーニ)もよいかもしれません。

 

 

隣人とのソーシャル・ディスタンシング

フランス各地の大都市にある共同住宅でも、郊外の閑静な住宅街でも、周囲から切り離された結果、人々はこの長い期間をかけて、より良い方法で他者と接するようになりました。自分のサークルを慎重に拡大して、他の者を受け入れることを認めるようになったケースもあります。パリでは、隣人たちが階段の吹き抜けや緑豊かな中庭で会い、マスクをつけて、安全な距離を保って交流しています。皆それぞれが家に帰る前に自分のドリンクとスナックを持ち帰ります。フランスの別の場所では、アメリカや英国でも見られるような「ドライブウェイ・ハッピーアワー」に相当することが行われています。同じブロックに住む隣人たちが、縁石や自宅の庭に椅子を寄せて、ビール片手に、距離は離して、でも一緒におしゃべりをするのです!

 

インタラクティブな演出

友人とのバーチャルトークを繰り広げる際には、ワークショップ、マスタークラス、そしてテイスティングを利用して、エキサイティングな夜が演出できます。チーズのテイスティングとペアリングの会社Le Cheese Geekは、普段は、マレ地区にあるFromagerie Jouannault(フロマジェリー・ジュアノー)17世紀の地下貯蔵庫で、最大10人までのグループを対象にテイスティング会を主催しています。誰もが外出できない状態にあるなかで、創業者のFabrice Gepner(ファブリス・ゲプナー)が4月にオンライン体験を導入し、フランス国家最優秀職人(MOF)の称号を持つチーズ熟成師François Robin(フランソワ・ロバン)と共同で、200人超のバーチャル参加者に向けて大規模なテイスティング会を開催しました。Robin氏は事前に取り寄せた5種類の産地直送のチーズの各々について楽しいクイズを織り交ぜながら熱心に解説して、インタラクティブな(対話型の)体験を演出しました。アペロの伝統と一緒に何かを同時に学べるなんて、やらない理由はないでしょう?

 

特別な演出

コンピュータ上での長い1日を過ごした後に気が緩んだところで、画面越しに夜を始める気になれない人もいるでしょう。代わりに、アペリティフを家庭で、家族だけで行う特別な毎晩の習慣に変えた人もいます。多くの人が自分でコレクションした上等なスピリッツやワインで行いましたが、特別なアペリティフを提供する多くの専門店やレストランに頼った人もいます。フランス流「自宅で楽しむアペロ(apéro-at-home)」の準備に関する詳細は、「食材購入スポット」ページをご覧ください。一杯いかがですか?

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