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パン・デ・フィロゾフ 自分らしく自由に、フランスのパン作りから学んだことを生かしながら、自分のパンを焼く

Tsuyoshi Murakami Tsuyoshi Murakami, writer 2020.06.30
Pain des philosophe

神楽坂にある「パン・デ・フィロゾフ」は、ドミニク・サブロンなどで活躍した榎本哲シェフの店。店名のフィロゾフはフランス語で哲学者。それと自身の名前の哲をかけてつけたそうです。店名が刻まれた看板は榎の葉の形をしています。

 

 落ち着いた雰囲気の店構え、間口も狭く、看板も小さく、正面からはパン店とは思えません。中に入ると、カウンターにパンが載っていて、その奥には、オーブンなどがあり、榎本シェフが立ち働いています。並んでいるパンが主役、いつもパンが並んでいて、それが街に溶け込んでいる感じを大切にしているのです。

 フランスのパンについては、例えばバゲットのように、シンプルなところが良いといいます。料理と一緒に食べるパン、チーズやワインに合わせて味わうパンを作りたい、シンプルなパンで生地のおいしさを追求していくのが楽しいそうです。

 バゲットは3種類、製法も粉も全部違います。味わいも食感も違うので、それぞれ違う楽しみ方をしてもらいたいと榎本シェフは考えています。

 一番長いのが、いわゆるバゲット。フランス産の小麦を使用しています。クラストがパリッと香ばしく、香りがとても良いバゲットです。短いのは、αバゲット、世界初の湯種で仕込むバゲット。湯種は食パンなどで用いられる方法、小麦粉の一部を熱湯で捏ね、一晩寝かせたその湯種を合わせて生地を作ります。湯種にすると澱粉質の甘さを感じるようになります。食感はモチっとした感じ、水分を多く入れられるので、パサつきにくく、翌日でも固くなりません。クラストが薄くなり、シュー生地のようになります。焼き立ては、外側パリッと中はモッチリ。2つの中間の長さのバゲット・オリゼは、名前の通り、小麦粉に麹を使った麹種を合わせて作ります。パリッとしたクラスト部分に醤油煎餅のような香ばしさが感じられるのが特徴です。

 人気のクロワッサンには、フランスのバター、シャラント・ポワトー地方のレスキュールのバターがたっぷり使われています。クロワッサンのように焼き込んでもおいしいバターは、いろいろ試したが、レスキュールしかないそうです。

 フランスは農業国で、おいしい食材がたくさんあるが、特にバターやチーズなどの乳製品が素晴らしいと榎本シェフはいいます。

 パンの生地そのもののおいしさを追求する榎本シェフは、種類は絞りながら、それぞれ異なる生地のパンを焼いています。そして、作るパンに合わせて、それぞれ酵母も変えます。リンゴのパンには、リンゴの天然酵母、レーズンのパンにはレーズンの天然酵母。水の代わりにワインを使うパンもあります。フランスのワイン、シラーとグルナッシュの赤ワイン。ジビエのような強い味わいの料理と合わせるのがおすすめのパンです。

 パン・デ・フィロゾフのパンは、どれも長時間発酵なので、いつも、前日の昼過ぎから翌日分を仕込みます。発酵の時間は、15〜18時間ぐらい。翌朝から焼き上げます。

 常識にとらわれず、これまでの経験の引き出しの中から生地を組み立て、本当においしいパンを追求する榎本シェフのパン店は、チーズショップやフランス料理店などとともに、神楽坂の街に溶け込んでいます。チーズショップでチーズを買った人が、榎本シェフの店にも寄ってパンを買っていきます。その逆もあります。それがシェフが望んだことでもあるのです。

(パン・デ・フィロゾフ 榎本哲氏インタビューによる)

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Le calvados Pays d’Auge AOC est une boisson alcoolisée (40 °) produite par distillation de cidre. Pommes issues de vergers normands (Pays d’Auge)
AOP カルヴァドス・ペイ・ドージュ
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