ナチュラルワインの今をディープに楽しめるワイン喫茶

By 江澤 香織

「フレンチタッチ×東京」のフードトレンドを体験 Vol.3

東京には魅力的で最先端なフレンチテイストが盛りだくさん!リアルで旬なフランスを感じられる店を、様々な切り口から体験してみました。4回に分けてご紹介します。Vol.3では、品川区旗の台のワイン喫茶「キリンストア」を訪ねました。

Kirin Store

東急線の旗の台駅から歩いて10分弱、本当にここにあるのかなとちょっと心細くなって来た頃に、ポツンと灯る優しい明かりが目印の「Kirin Store(キリンストア)」。扉を開けると、アンティーク調のどこか懐かしい雰囲気の店内にほっと和まされます。窓辺にはワインのボトルがずらりと並んでおり、置いてあるのは全てナチュラルワイン。店内ではグラス1杯から楽しめ、酒屋としてボトルの販売も行っています。在庫は200種類以上。店主の田村亮さんは、昔からワインが大好きで、フランス留学経験もあり、以前は料理雑誌の編集長を務めていたという、頼もしい食とワインのコンシェルジュ。かつて休暇でパリへ行ったとき、ナチュラルワインの醸造家の巨匠のワインと出会い、その時あまりの美味しさに驚いて以来、本格的にナチュラルワインと向き合うようになったのだそう。ワインについて分からないときは田村さんに相談してみれば、きっと料理にぴったり合うものを選んでくれます。

「フランスワインは種類も値段も本当に幅があるので選択肢が多く、また洗練されたバランス良いワインが多い印象なので、仕入れる側の目線としては頼りになるワインです。うちではボルドーやブルゴーニュのような、あまりメジャーな地域のものは少なく、ちょっと個性的なものが多いかもしれないですね。フランスのナチュラルワインはラベルデザインがモダンでユニーク、おしゃれなものが多いのも特徴のひとつです」

最近特に人気が高いのは、オレンジワインやペットナット。

オレンジワインとは、原料は白ぶどうで、赤ワインの製法でつくられたワインのこと。通常白ワインをつくるときには取り除く白ぶどうの果皮や種を破砕して一緒に漬け込み、醸造するため、白ワインよりコクや渋みのある複雑な味わいになります。ペットナットとはペティアン・ナチュレルの略で、微発泡のナチュラルワイン。野生酵母で発酵させ、補糖や酸化防止剤の添加を行わず、無ろ過でつくるものも多いため、それによって生じる濁りもまた魅力です。

© Kirin Store

田村さんに料理とワインのペアリングを教えていただきました。ペットナット「Bulle Rose 2021, Le Jonc Blanc(ビュル・ローズ 2021 ル・ジョン・ブラン)」に合わせたのは夏野菜のフリット。ゲランド塩にハーブやスパイスを混ぜた、中東風のオリジナル“キリン塩”を添えています。フリットのカラリと揚がったクリスピーな食感が、弾ける泡の舌触りと馴染み、また濁りワインの野生的で土っぽい深みのある味が、農産物の滋味深さに寄り添います。ペティアンは、泡が抜けても美味しく飲めるものが多いので、一本を数日かけて飲みたい人にもおすすめとのこと。

© Kirin Store

オレンジワイン「Zeste 2021, Les Sablonnettes(ゼスト2021 レ・サブロネット)」にはシャルキュトリー3種の盛り合わせを。ジャンボン・セック・ド・オーヴェルニュ(オーヴェルニュ地方の生ハム)、ソシソン・セック・ド・サヴォア(サヴォア地方のサラミ)、そしてフランス産のコッパ。フランスのオレンジワインは洗練されたスマートなものが多いそうですが、フレッシュとドライの中間くらいのふくよかなアプリコット風味や、柑橘の皮のような風味が、繊細ながら熟成した旨味のあるシャルキュトリーにマッチします。ニンニクや胡椒を強く効かせたようなものなら赤ワインがいい場合もありますが、プレーンな素材そのものをシンプルに味わうような場合、オレンジワインがちょうど良い加減でハマることが多いそうです。

Kirin Store(キリンストア)

東京都品川区旗の台1-1-14 大沼ビル1F

Tel 03-6426-7554 

http://www.kirinstore.com/

Contributor

Ezawa Kaori
江澤 香織

ライター、旅、食、クラフトなどを中心に執筆

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