オイルの香りを纏わせ、素材の味、風味を引き立たせる

By Tsuyoshi Murakami

バターも含めて、ソテーやポワレなどの加熱調理には、オイル(油脂)を必要としますが、一方で、オイルは、ドレッシングやマリネなど、加熱せずに使われることも少なくありません。その場合に重視されるのは、香りです。香りの良いオイルがあれば、それだけでも野菜をおいしくいただけます。

 オイルの使い方で気をつけているのは、料理を味わう時にオイルをあまり感じないようにすることです。油っぽくならないようにしながら、「香り」を纏わせるようにすることを意識しています。素材の味や風味を引き立たせるためにオイルをどう使うのか、その香りをどう生かすのかということを考えます。

 「ポレンタとコーン、ヒマワリオイル」(レシピ参照)では、ヒマワリオイルを合わせました。ほのかに香ばしい後味など、主張は強くないが、ほど良く、炙ったコーンに絡んでくれます。オリーブオイルでは、その香りが前面に出てしまうと思います。風味が調和するものを選び、それぞれ組み合わせる素材に適したオイルを使用するようにしています。

 「バイヨンヌハムとジャガイモ、オリーブ添え、ノワゼットオイル風味」(レシピ参照)に使用したのは、ノワゼットオイル。ヘーゼルナッツを原料とするオイルです。ジャガイモとの相性はとても良く、独特の香ばしい香りが料理を引き立ててくれます。

 フランスには、さまざまなオイルがあります。ノワゼットの他、アーモンドやクルミ、ピスタチオ、ピーナッツなど、ナッツ類を原料としたオイルは、それぞれのナッツの特徴のある香りで料理に利用されています。グレープシードオイルやヘンプシード(麻)オイルなど、健康面で注目されるオイルもあります。

 加熱調理では、主にバターやオリーブオイルを使用しています。フランスでは、バター、ラード、ガチョウの脂、オリーブオイルなどが、地方によって使い分けられてきた歴史があります。現代では、健康志向や軽い料理が好まれることなどから、オリーブオイルを使用することが多くなっていますが、地方の伝統料理を作る場合には、油脂も変えたほうが良いと思います。

 日本料理には、天ぷらのように油で揚げる調理法はありますが、油脂を使って素材を加熱する料理はあまりありません。香りづけに使われるのもゴマ油ぐらいですが、今の日本の食卓では、多様な料理が食されていますので、それぞれ香りに特徴のあるフランスのオイルを利用すれば、より豊かな風味の料理を楽しむことができるでしょう。

 

アニスシェフ・清水将氏インタビューにより構成

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