マスタードを生かして風味豊かな料理を楽しむ

By Tsuyoshi Murakami

マスタードの原料はアブラナ科のからし菜の種子です。ローマ時代には、この種子をすり潰して発酵前のブドウ果汁などで練ったものが使われていたようです。日本の和がらしも同種の植物ですが、フランスのマスタードは、ヴィネガーを使って練るので、辛味が抑えられるそうです。ヴィネガーは辛味を発生させる酵素の働きを抑えてくれるのです。

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 ディジョンマスタードは、ペースト状のマスタードの代表的なものです。ディジョンというのは、ワインで名高いブルゴーニュ地方の中心都市、中世からマスタードの産地として知られ、現在でも、多くのマスタードがディジョンで生産されています。

 ディジョンマスタードは、からし菜の種子の皮を取り除いてすり潰し、ヴィネガーなどで滑らかに練り上げます。フランスでは、ムータルド・アランシエンヌ(オールドタイプのマスタード)と呼ばれる種入りマスタード(粒マスタード)は、外皮をつけたまま、種子の形を残して粗挽きにした種子をヴィネガーなどで練ったものです。白ワインで練るメーカーもあり、穏やかな味わいと豊かな風味が楽しめます。

 フランス人は、これらの使い分けをそれほど意識してはいません。好みによって使い分けているといえばいいでしょうか。とはいっても、フランス人は、ステーキに必ずディジョンマスタードを添えます。マスタードは基本的に薬味なので、自分の好きなように料理に添えて食べます。

 個人的には、ディジョンマスタードが好みです。野菜にそのままつけてもおいしいですし、ハーブやカシスなど果実の風味がついたマスタードもありますので、そういう変化を楽しむのもおもしろいですね。

 あまり知られていませんが、ディジョンマスタードは、自家製マヨネーズを作る時のスターターとして、乳化剤の役割を果たします。少し加えるだけでうまく乳化してくれます。卵黄に酢を入れてかき混ぜても、なかなか乳化してくれませんが、酢の代わりにマスタードを入れてかき混ぜれば早くできます。さらに油を加えて乳化させ、後から酢を加えて伸ばせば大丈夫です。また、フレンチドレッシング作りに用いれば、乳化の効果があるので、少しトロッとしてくれます。

 マスタードを使った料理としては、フランスでは、ウサギのマスタード風味などが知られていますが、日本なら、鶏肉を使い、マスタードを加えて煮込んでも良いでしょう。鶏肉をソテーして、白ワイン、ディジョンマスタードなどを加えて煮込みます。生クリームと種入りマスタードで煮込めば、ノルマンディ風になります。

(料理研究家 脇雅世氏インタビューにより記事構成)

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